ディスラプションは予測可能
ディスラプションは、決して小さな問題ではない。ただし喫緊の問題ではなく、今後5~10年の中長期で対峙することになるもののことである。ディスラプションに対応するには、いつ頃台頭し、どれくらいの影響力を持つのかを長い展望で見ていく「予測」が重要となる。「しかし、もっと重要なことは、ディスラプションに対処する方法論を確立することによって、どのようなディスラプションが到来しても対峙できるようにすることだ」とマン氏は語る。
ディスラプションにはいくつかのパターンがある。1つは、連続的に、少しずつ機能追加されて時間をかけて市場を席巻するもの。
たとえばGmailなどはこれに当たる。最初はEメールの機能だけだったが、リマインダー機能が追加され、カレンダーなどと連携し、小さな変更を重ね市場を占有していく。
2つ目は、一時的な流行のように訪れるもの。分かりやすい例を挙げるなら、ポケモンGOのようなものだ。リリース直後は大きな流行を呼んだが、その効果は長くは続いてはいない。
3つ目が、まさに「破壊的」と呼ぶべき、根本的なシフトを起こすもの。Netflixがビデオレンタル業界を消し去ったような、本当の意味でのディスラプションだ。
ディスラプションに飲まれたコダック、時流に乗ったマイクロソフト
こうした、さまざまなパターンのディスラプションが次から次へと到来し、個人・企業はショックやストレスを受ける。しかし、このディスラプションの波に飲まれる企業もあれば、うまく便乗する企業もある。マン氏はいくつかの企業の選択について、実例を挙げて説明した。コダックは、化学製品を製造し、フィルムを開発する、カメラおよび写真業界のジャイアントだった。デジタルカメラが台頭した時に、フィルムの領域を抑制し、代わりにデジタル・イメージング領域に注力するという選択肢があった。しかし、カメラ用フィルムの販売を続ける選択をし、凋落することになった。
ブラックベリーも判断を間違った例の一つだ。市場が求めているのはハードウェア・キーボードであり、それに賭けることが自分たちの身を守るものと考えていた。しかし、実際には前面ガラス製のスマートフォンが大勢となっていった。
一方、正しい選択をしたのはマイクロソフトだ。当初マイクロソフトは、クラウドをオンプレミスに次ぐ二次的なオプションとしか考えていなかった。しかし、ある時点でクラウドが主要なオプションになることに気づき、機を逃さずにすべてのプロダクトをクラウドに移行し、利益を拡大することができた。
ディスラプションに乗るか、衝撃を緩和するか
では、自社がディスラプションの大波に見舞われた時、道筋をどう選択すべきなのか。マン氏は「ディスラプション・ベクトル・モデル」を用いて未来を見通す方法を説明した。
「道は2つに分かれている。1つは、ディスラプションが起こした波に乗る、うまく活用しようとする攻めの道筋。もう1つは、ディスラプションによって自分たちが余儀なくされる衰退の過程をコントロールし、影響を最小限に抑えて自社の製品・サービスを守る道筋だ。時として後者の守りの道筋を選ぶのが良いケースもあるが、前者のほうが良い選択であることが多い」(マン氏)
攻めの道と守りの道、どちらを選択するかを決める時は、4つを自問することが重要だとマン氏はいう。その4つとは、「真に対象にすべき市場とは?」「投資をシフトするのに必要なスキルとリソースはあるか?」「潜在的な市場は既存市場よりも大きいか?」「真に対象にすべき顧客/構成員とは?」といった基本的な質問だ。
「ディスラプションを活用する攻めの道筋を見い出すには、まず自社のプロジェクトのロードマップを検討することが重要です。そして、関連するディスラプションによりどのような変化があり、それをどう活用できるのか、ロードマップにどのような影響が出てくるのか、連携させて考えることが必要でしょう。さらに、ディスラプションによる副次的な効果や、それがいつ起こるのか、自社の対策をいつ行うのかといった時間軸も合わせて検討します」(マン氏)
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January 28, 2020 at 05:12AM
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