Sunday, June 6, 2021

先進機能満載のストレージをクラウドで使う マネージド型や自由設計など適材適所の選択肢 - クラウド Watch

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 企業向けストレージおよびデータ管理ソリューションの領域で市場をリードするネットアップはクラウド展開にも抜かりがない。市場から熱い視線を注がれる代表として、「Azure NetApp Files」と「Cloud Volumes ONTAP」がある。それぞれのポジショニングや特長とは──。ネットアップ、さらに2つのサービスを熟知して事業展開しているネットワールドのキーパーソンに話を聞いた。

 デジタルテクノロジーの進化と普及がビジネスに大きなインパクトをもたらしている。斬新なビジネスモデルが世に受け入れられれば業績は一気に伸びる。もっとも、市場では次から次へと新機軸が打ち出されるので安穏とはしていられない。SNSなどで評判が拡散しやすいこともあり、良くも悪くも“振れ幅”が大きいのが昨今の傾向だ。

 このように、事業を巡る市場の変化も、企業を取り巻く環境の変化も、激しさを増すばかり。経営と各種の情報システムは切り離せない関係にある以上、IT基盤もまたその変化に追随し得る機動力や柔軟性が求められる。その文脈で、クラウドシフトが加速しているのは周知の通りだ。

クラウド展開が加速するネットアップ

 何よりもスピードがものをいうこの時代、企業にとって最も重要な取り組みの一つは、社内外に溢れるデータを巧みに活用しながら最善策を素早く講じていくことである。だからこそ、IT基盤の中でも、とりわけ関心が集まっているのがストレージの領域だ。従来のオンプレミスの環境で、使い慣れていたもの、あるいは市場での評価が高かったものをクラウド環境でも使いたいという声が高まるのは当然の流れである。

 そうしたニーズに呼応して、独自のストレージ技術をクラウドでも利用できるように早期から積極的に取り組んでいるのがネットアップだ。注目すべき1つは、MicrosoftがパブリッククラウドのAzure上で提供しているPaaS型のクラウドストレージ「Azure NetApp Files」(ANF)。そして、もう1つはネットアップが各種パブリッククラウドで提供しているIaaS型のクラウドストレージ「Cloud Volumes ONTAP」(CVO)である。

 日本国内において、これら2つのクラウドストレージを熟知しつつユーザーを支援しているのがネットワールドだ。同社は2008年にアジアで初めてネットアップの販売代理店になった経緯があり、オンプレミスが主流だった時代から多くの実績がある。またAzure NetApp Filesについては、Microsoftの認定インダイレクトプロバイダーというポジションで取り扱っている。

市場から耳目集める2つの選択肢

 「Azure NetApp FilesとCloud Volumes ONTAPは、いずれもネットアップの技術を用いたストレージサービスですが、位置付けや提供主体が異なりそれぞれに特性があります。目的やニーズに沿って適材適所で使い分けられる選択肢を提供しています」。そう話すのはネットアップの工藤政彦氏(Azureビジネスグループ Azureスペシャリスト)だ。

ネットアップの工藤政彦氏(Azureビジネスグループ Azureスペシャリスト)

 Azure NetApp Filesは、Azure上のストレージを誰でも簡単かつ素早く調達できるフルマネージド型のサービスであり、ユーザーが自ら管理する要素(触れる部分)は少ない。一方のCloud Volumes ONTAPは、オンプレミス環境のネットアップストレージ装置と同様に運用できる点が特長である。

 主な違いは、ストレージ設計の自由度にある。Azure NetApp Filesの場合、容量(料金)を増やせば、それに追従してI/O性能がリニアに上がる。考え方はシンプルであり、ストレージ設計の要素はほとんどない。一方、Cloud Volumes ONTAPは、仮想マシンの性能(vCPU、メモリー)、ストレージの種類と容量、あまり使わないデータを格納するオブジェクトストレージ(Amazon S3やAzure Blob Storage)の使用割合などを自由に設計できる。

 ネットワールドの福住遊氏(マーケティング本部 セールスコンサルティング部 セールスコンサルティング1課 課長)は「例えばCloud Volumes ONTAPの場合、設計次第でコストを抑えつつデータ容量を増やせるといった工夫の余地があります。ファイルサーバーなどのように、データ容量が増えても要求I/O性能がさほど変わらないアプリケーションでコスト優位性があるなど、使いこなしていく上でのポイントがあるのです」と話す。

ネットワールドの福住遊氏(マーケティング本部 セールスコンサルティング部 セールスコンサルティング1課 課長)

 以下では、2つのクラウドストレージについて、あらためて詳しく見ていこう。

Microsoftが提供するフルマネージド型

 Azure NetApp Filesは、Microsoftが自社サービスとして提供するクラウドストレージである。NetAppのストレージ装置をベアメタル型で設置してクラウド型で提供(日本では東日本と西日本の2カ所に設置している)。機能としては、ファイルサービス(SMB 2.1/3.0/3.1、NFS 3.0/4.1)を提供する。

 フルマネージド型であるため、ハードウエア障害やドライブ交換などの作業が発生しない。導入はきわめて容易でファイルサーバーを10分ほどで構築できる。具体的な手順としては、NetAppアカウントを作成し、容量プールを作成し、ボリュームを作成する、という3ステップで済むのが特長だ。一方、可用性のSLAについては99.99%を保証。Azureのストレージとして、SAP(データベース)やOracle(データベース)、HPC(高負荷計算)、VDI(仮想デスクトップ)、AVS(VMware)、ファイルサーバーといった用途で幅広く使える。

図1 Azure NetApp Filesは、Azureが標準で提供しているマネージド型のクラウドストレージサービスである。導入が容易であり、ファイルサーバーを10分で構築できる

 「データベースとストレージを近い場所に設置する『近接通信配置グループ(PPG)』と呼ぶAzureの仕組みを適用することで、高速性が要求されるSAP HANAに対しても、低遅延で利用することが可能です」(ネットアップの工藤氏)。また、アプリケーションの整合性を確保したままストレージボリュームのスナップショットを取得するAzureのツール「AzAcSnap」も利用できる。

3つのプランでシンプルな課金体系

 Azure NetApp Filesの課金体系はシンプルで、契約する容量プールのサイズで決まる。性能が異なる3つのプラン(Ultra/Premium/Standard)を用意しており、それぞれ容量単価が異なる。Standardプランの場合、最小構成(4Tバイト)で1時間約110円である。

 性能は、Standardが1Tバイトあたり16Mバイト/秒、Premiumは金額2倍で性能4倍(1Tバイトあたり64Mバイト/秒)、Ultraは金額約2.6倍強で性能8倍(1Tバイトあたり128Mバイト/秒)になる。1円あたりのI/O性能は、Ultraが高くなる。

 同一プランであれば、容量を2倍に増やせば、性能と料金も2倍に増える。ただし、Ultraは容量約35Tバイト、Premiumは容量約70Tバイトで性能が頭打ちになる。Standardはストレージ容量の上限(100Tバイト)までリニアに性能が上がるという。

先駆的なストレージOSをクラウド上で提供

 一方のCloud Volumes ONTAPは、ネットアップストレージの独自OS「ONTAP」を、パブリッククラウド(Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloud)の仮想マシン上で動作させて提供するIaaS型のストレージサービスである。ユーザーは、仮想マシンとONTAPを自ら運用する形になる。

図2 Cloud Volumes ONTAPは、ネットアップのストレージOS「ONTAP」を、パブリッククラウド(Amazon Web Services、Azure、Google Cloud)の仮想マシン上で動作させて提供するIaaS型のストレージサービスである

 オンプレミス環境のネットアップストレージ装置と比べた運用上のメリットは、データ量が増えた際に、すぐに拡張できることである。オンプレミス環境のストレージ装置は納期が1カ月以上で、設定や搬入を含めて1カ月半ほどの時間を要するのが一般的だ。これに対し「IaaSであれば、マウスをクリックするだけで約25分でリソースを調達できますし、サーバーインスタンス(vCPUやメモリー)の変更もきわめて容易です」とネットワールドの福住氏は話す。

 ONTAPがそのまま使えるので、オンプレミス環境のネットアップストレージ装置と同様の運用体験が約束される。具体的には、スナップショット、重複排除、データ圧縮、暗号化、SnapMirror(レプリケーション)などの機能群を利用できる。ONTAPでの運用に慣れ親しんだユーザーにとってはスキルやノウハウを活かせるのでありがたい。

 FabricPoolというILM(階層型ストレージ管理)機能も備えている。これは、頻ぱんにアクセスするホットデータをマネージドディスク(SSD)に保存しつつ、あまりアクセスしないコールドデータをAzure Blob Storage やAmazon S3などの安価なオブジェクトストレージに自動で退避させてSSDの空き容量を確保するというものだ。

運用シーンにおける機能の充実度に脚光

 ONTAPの機能群のうち、「特にSnapMirror(レプリケーション)が使える点は大きなメリット」だと福住氏は指摘する。DR(災害時復旧)やバックアップを目的に、オンプレミス環境とクラウド間でのデータコピーはもちろん、Amazon Web ServicesからAzureへのコピーなど、異なるパブリッククラウド間でもデータコピーが可能である。

 コピー元とコピー先の両方にNetAppストレージ(ONTAP)を用意する形のレプリケーションだけでなく、コピー先にストレージ(ONTAP)を用意しない形のレプリケーションもできる。この場合、Azure Blob Storage やAmazon S3などのオブジェクトストレージに対して、直接データをコピーできる。

 さらにFabricPoolとも組み合わせられる。コピー先のストレージ(ONTAP)にSnapMirror(レプリケーション)でデータをコピーする際に、コピー先のストレージ側で、SSDではなくAzure Blob Storage やAmazon S3などのオブジェクトストレージにデータを格納することになる。

図3 CVO Azureでの災害対策構成例。Azureへ転送されたデータは、 FabricPoolによって安価なオブジェクトストレージ(Blob ストレージ)を使いながら自動階層化することができる

 ネットアップの技術をベースとした2つのクラウドストレージを概観してきたが、利用を検討する企業にはそれぞれのニーズや事情があり、即断しかねるケースも多々あるだろう。クラウドベースのサービスゆえに機能の追加や強化も頻繁にある。だからこそ、机上でスペック表を読み込むより、実績豊富で頼りになるパートナーに相談するのが近道だ。

 「ネットワールドは基幹システムやVDI、プライベートクラウドなど多様な用途でのストレージの設計~導入に携わってきており、そのノウハウを活かして、最適な提案ができると自負しています。ネットアップ及びマイクロソフトとも万全の協調体制をとっており、最新の技術情報を共有しながらお客様に全方位でサポートすることが可能です。困りごとや悩みごとがあれば、ぜひ当社にお声がけください」と福住氏は取材を締めくくった。

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