前回から大分時間が経ってしまいましたが、ストレージのデータは揮発しないので大丈夫です!しっかりデータも保護し記事継続(ビジネス継続?)しながら掲載続けます。
前回は、RAID技術についてその方式と利用形態などの説明をさせていただきました。RAIDの使い分けにおいて、メディアの種類によって使用するRAID方式も変わってきたという話を紹介させていただきました。
記憶メディアは、現在では、コンピュータだけではなくさまざまな家庭用製品でも使われています。身近なところではビデオレコーダー、デジカメ、カーナビ等挙げればきりがありませんが、データが保存されているところには何らかの記憶メディアが使用されています。
メディアとしてはHDDやSSD、SDカード、USBメモリ等がありますが、今回はそのメディアとして代表的なHDDとSSDについてどのような違いがあるのか、成り立ちや仕組みについて紹介していきます。
HDDについて
最初の商用HDDは、1956年にIBM 305 RAMACの一部として発表されたIBM 350です。50枚の24インチ(約61cm)の磁気ディスクで構成されユニットとしては、長さ60インチ、高さ68インチ、奥行き29インチでした。サイズとしては500Lの大型冷蔵庫2台分と非常に巨大なものでした。容量500万文字(1文字が6ビット相当であるので、現在一般に使われる1文字=8ビットの容量に換算すると約3.75MB)であり、転送速度は8,800文字/秒でした。
この巨大で現在に比べて小容量なHDDですが、磁気ディスクと磁気ヘッドという基本的な構成は変わらないまま、時代とともに大容量化・高速化・小型化が進んでいきます。1973年には「ウィンチェスター」として知られる現在に渡って使用されている技術(磁気ディスクや制御装置等を密封された筐体内に固定される形式、「図1ディスクの主要な構成部品」参照)を採用したIBM 3340ディスク装置が発表されました。容量は70MBであり、転送速度は885KB/秒でした。
この後、PC用のHDDが登場するのは1980年代になってからです。当初は容量が10MB程度でしたが、非常に高価でした。1980年代後半にはHDDは3.5インチが主流でしたが、1990年代になると3.5インチと2.5インチが主流となります。
また、容量は1990年代ぐらいから指数関数的に増加していきます。1990年には大凡100MBであった容量が、2000年に8GB、2010年に500GBと増えていきました。容量が増大すると共にインターフェースも進化し、現在ではSATA(*1)やSAS(*2)と呼ばれるインターフェースが使用されています。
2008年に発表されたSATAリビジョン3では転送速度が600MB/秒(SATAについてはその後も細かい改訂がされ2020年にリビジョン3.5が策定されています。)、2017年に策定されたSAS-4では2400MB/秒となっています。ただしHDDはディスクプラッタ(*3)数、ヘッド数、回転速度、記録密度から物理的に限界の転送速度限界が決まってきます。現時点(2021年1月)において1万円程度で購入できる6TBのHDDのスペックを調べてみますと、SATA3のインターフェース、回転数は5400rpm、最大転送速度は約170MB/秒とあります。インターフェースの速度は600MB/秒なので、HDDとしては最大転送速度で転送してもインターフェース的には余裕があります。
(*1) Serial ATAの略、ATAはAT Attachmentの略でANSIのインターフェース規格の一つ、「AT」は「AT互換機」の「AT」と同じAdvanced Technologyの略。
(*2) Serial Attached SCSIの略、SCSIはSmall Computer System Interfaceの略でANSIのインターフェース規格の一つ。
(*3) HDD内に固定されている円盤状の記録用部品。
SSDについて
最初の商用SSDは、1991年にSanDiskが出荷した容量20MBのSSDです。価格は1000ドルと非常に高価でした。フラッシュメモリで構成されるSSDは、フラッシュメモリの進化に伴って、HDDと同様に大容量化していきます。
1999年にBiTMICRO社から容量18GB、転送速度は18MB/秒の3.5インチサイズのSSDが発表されました。2007年にFusion-io社から容量320GB、転送速度(読込)は800MB/秒のSSDが発表されました。2016年にSeagateから容量60TB、転送速度(読込)は1500MB/秒のSSDが発表され、現時点(2021年1月)においてHDDと同様に1万円程度で購入できるSSDはM.2規格のものではPCIeのインターフェース、容量1TB、転送速度(読込)2000MB/秒とあります。
同様に2.5インチ規格のものではSATA3のインターフェース、容量1TB、転送速度(読込)560MB/秒とあります。PCIeのインターフェースでは仕様上10GB/秒の転送ができるので、M.2規格のSSDは転送速度の高速化に余地がありますが、前述の通りSATA3は規格として600MB/秒であるので2.5インチ規格のSSDは転送速度の限界に近づいています。
一方SSDにはHDDに無い特徴としてTBW(*4)という指標があります。これはSSDを構成するフラッシュメモリには書き込みできる限界があるためです。TBWはSSDとして書き込みできる量について、決められた計算方法で算出された値となります。
(*4) Terabytes Writtenの略、JEDECが定めたJESD218という規格に定義されている。
HDDとSSDの比較
ここで市場価格が約1万円のHDDとSSDを表形式で比較してみます。
HDD | SSD | ||
---|---|---|---|
規格 | 3.5インチ | 2.5インチ | M.2 |
インターフェース | SATA3 | PCI-Express Gen3 | |
容量 | 6TB | 1TB | |
転送速度 | 170MB/秒 | 560MB/秒(読込)、510MB(書込) | 2000MB/秒(読込)1700MB(書込) |
消費電力 | 2.68W(アクティブアイドル時) | データなし | データなし |
主な構成部品 | 磁気ディスク・磁気ヘッド・筐体 | フラッシュメモリ・筐体 | フラッシュメモリ・基盤 |
表 1 : 市場価格約1万円で購入できるHDDとSSDの比較
比較の表をもとに一般的なHDDとSSDを比較してみますと、HDDの方が単価あたりの容量は大きいですが、転送速度はSSDの方が高速になります。構成部品として、HDDは磁気ディスクや磁気ヘッドなどの可動部品があるのに対し、SSDには可動部品はありません。HDDのアイドル時の消費電力は2~3Wですが、可動部品がないSSDはHDDに比べ消費電力が小さいです。また可動部品があることとないことで、故障率にも影響します。
弊社サイトの「サーバーにSSDを選ぶ4つの理由」によると、SSDはHDDの1/8の故障率とあります。またSSDはフラッシュメモリで構成されているので書き込みできる限界が存在するという特徴もあります。
このようにHDDとSSDではそれぞれ特徴があることがわかります。よって使用する用途に合わせて適切なメディアを選択することが望ましいでしょう。
3つのストレージアクセス方式
ここまで、ストレージアレイに搭載する記憶メディアについて、解説させてもらいましたが、ここからは実際にどのような仕組みでストレージにアクセスするのか、そのアクセス方式の違いから、どのようなタイプのストレージがあり、それぞれどのような特徴を持っているのかについて解説していきます。
ブロックアクセス方式
ストレージにデータを格納する際は、ブロックアクセス型ストレージで作成した論理ボリュームを固定長のブロック単位に分割してデータアクセスを行います。(図2参照)
このような説明をすると、後述するファイルアクセスじゃないとファイルは保存できない?と誤解されるかもしれませんが、実際にブロックストレージにアクセスする際には、サーバのOSのファイルシステムを介してアクセスするので、サーバからはファイル単位でのアクセスも可能です。
アクセス時の性能については、論理ボリュームの番号とブロックの番号により、データを特定するだけで、ストレージ自体でデータを共有する機能(*5)を有したり、データの属性情報を保持したりもしないので、大容量のデータでも高速にアクセスすることが可能です。
(*5)サーバでデータを共有する場合は、サーバ側でクラスタウェアなどを導入する必要あり。
プロトコルについては、SAN 経由で接続するのであればFibre Channel (FC)、LAN経由で接続するのであればiSCSIで接続する構成が一般的です。
ファイルアクセス方式
ファイルアクセス型のストレージ (NAS:Network Attached Storageと言った方がわかりやすいかもしれませんが)でも論理ボリュームとブロックに分割しますが、これらをストレージに搭載されたファイルシステムのルートからのディレクトリとファイル名を含むパス名でデータをファイルとして特定して、読み書きを行います。
ファイルにアクセスする際は、メタデータによってデータの格納先を判別しているためブロックアクセスを比較すると劣りますが、ファイルを共有したり、ファイルの種類、サイズ、更新日などの属性情報を保持したり、ブロックストレージにはないストレージ機能を有していたりします。
プロトコルについては、IPネットワークを経由して、NFSやCIFS、SMBを使用しますので、SANを導入する必要はないのもファイルアクセス型ストレージの大きな利点です。
オブジェクトアクセス
最後にファイルデータをファイルストレージとは異なる方式で扱うオブジェクトストレージがありますが、こちらについては、次回以降に解説しますので、今回は割愛します。
最後に、3つのアクセス方式について、まとめました。(表2参照)
このように一概にストレージアレイといっても、利用目的によって、それに適したストレージを選択する必要があることをご理解いただけましたでしょうか。
3まとめ
今回取り扱った内容は以下の通りです。
・HDDはSSDより単価当たりの容量が大きい
・SSDはHDDより高転送速度、低消費電力、低故障率
・SSDは書き込みできる限界がある
・ストレージのアクセス方式には、ブロックアクセス、ファイルアクセス、オブジェクトアクセスがある
・ブロックアクセスは、データベースなど高レスポンスを必要とするシステムに適している
・ファイルアクセスは、画像など様々なファイルを共有する必要があるシステムに適している
次回予告
ストレージの機能について取り上げて説明します。
それではまた次回、地味でディープなストレージの世界でお目にかかりましょう
[ 著者紹介 ]
和田 啓二
デル・テクノロジーズ株式会社 ITXコンサルティング部 コンサルタント2018年にEMCジャパン(現デル・テクノロジーズ)へ入社して以来、企業のインフラ環境の仮想化やインフラ移転検討支援、IT環境の最適化支援等に従事。
からの記事と詳細 ( 基本から学ぶストレージ講座(6) ストレージを構成する要素 - マイナビニュース )
https://ift.tt/3opGxb9
0 Comments:
Post a Comment