プロ野球は1日、各地で一斉にキャンプイン。コロナ下で政府だけでなく宮崎、沖縄両県の緊急事態宣言も出される中、3月26日の開幕に向けて無観客でスタートした。沖縄・石垣島でキャンプを行うロッテの佐々木朗希投手(19)はいきなりブルペン入り。最速163キロを誇る岩手出身の2年目右腕は東日本大震災から10年となる3月11日の楽天とのオープン戦(静岡)への登板に意欲を見せた。
ファンの視線はない。歓声もない。異例のキャンプインとなったが、佐々木朗は自分のやるべきことに徹した。大半の選手が捕手を座らせる中で自分のペースを崩さず、中腰の捕手・吉田に対し投球。「令和の怪物」の2年目がスタートした。
「(まだキャンプ初日という)時期の問題もあるし、気持ちの入り方も試合とは違うけど、ボールはある程度、よかったのかなと思います。今は自分のタイミングで投げることを意識しています」
オール直球で37球。20球を超えるとエンジンの回転数も上がった。吉田からは「ナイスボール!」の掛け声も飛ぶ。高卒1年目だった昨春はキャンプ打ち上げの13日が初ブルペンだったが、今年は初日からブルペン入り。しかも1年前とは明らかに異なる姿だった。
テークバックを大きく使う投げ方は、昨季最多奪三振王に輝いたオリックス・山本のよう。自主トレでは、その山本の練習法で有名なやり投げ「ジャベリックスロー」も取り入れた。理由については「好奇心」と多くを語らなかったが、2年目の進化のため、貪欲な姿勢を示している。
強い思いがある。11年3月11日の東日本大震災から今年で10年。津波で父も亡くしている岩手出身の右腕にとって3・11は特別な日だ。今年は場所は静岡ながら東北を本拠とする楽天とのオープン戦。「そこで投げたいか?」との問いに「そうですね」とうなずき「僕が1軍にいたらですけど、1軍にいられるように頑張りたいと思います」と続けた。忌まわしき震災を風化させず、被災者に勇気を届ける。それが自身の宿命であると考える。
楽天には「東北の英雄」でもある田中将が復帰。昨季は右肘の違和感で実戦登板はなかったが、体づくりに専念して2021年の下地は出来上がっただけに井口監督も「(練習試合、オープン戦で)朗希がしっかりと投げてくれれば…」と夢の投げ合いが実現する可能性も示唆している。
佐々木朗は「開幕に向けてどんどん投球の精度、球の強さを上げていければ」と言葉に力を込める。3・11まであと37日。鎮魂のマウンドを目指し、調整を続ける。(横市 勇)
▽20年の佐々木朗 沖縄・石垣島での1軍春季キャンプに参加し、主にブルペン調整。3月下旬のフリー打撃初登板は打者2人に計25球、最速157キロだった。5月下旬のシート打撃では160キロを2度計測したが、その後はコンディション不良が続き実戦登板は白紙。シーズン通して1軍に同行し、体づくりに励んだ。12月14日の契約更改は現状維持の1600万円。「まだまだ心も体も幼かったと思うけど、少しずつ成長はできた」と振り返った。
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