Friday, November 20, 2020

常陽核燃料 保管に甘さ 行政レビューで河野行革相が追及 - 東京新聞

 政府の予算執行の無駄を公開で検証する「秋の行政事業レビュー」では、日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(大洗町)を巡り、使用済み核燃料の保管計画の甘さが問題視された。河野太郎行政改革担当相は、機構の新型転換炉ふげん(福井県敦賀市、廃炉中)で使用済み核燃料の後始末が泥縄になっていると指摘し、「常陽はその失敗を繰り返さないように」と念押しした。 (宮尾幹成)

◆保管期間

 「ちょっと待った!」。十四日のレビュー。会場の中央合同庁舎八号館(東京・霞が関)講堂に、河野氏の怒声が響いた。

 「地元と使用済み核燃料を保管できる合意が取れているのか。ふげんのように、地元に置けないからよそに持ち出すことを常陽で繰り返すな、というのが論点。話をそらすなよ」

 機構を所管する文部科学省の生川浩史(いくかわひろし)研究開発局長が、常陽について「大洗町から早期の再稼働の要請をいただいている」と説明し始めた直後だった。

 常陽の使用済み核燃料プールの容量は計千百五十体分で、既に約三分の二の七百四十体を保管中。県や大洗町、原子力機構によると、三者間で保管期間についての合意や、将来的に廃炉になった場合にそのまま置き続けられるかについての取り決めはない。

 この点を指摘された文科省の担当者は「プールで貯蔵することはご理解いただいている」と説明するのがやっとで、河野氏は「プールの容量までしか稼働しないんだね? プールの中に何十年も置いておくの?」と畳み掛けた。

◆搬出期限

 河野氏が常陽の使用済み核燃料の保管計画にこだわるのは、取り扱いがあいまいなままの使用済み核燃料の処分に巨額の支出が始まっているふげんの二の舞いを懸念しているからだ。

 機構の運営費の大部分は文科省の交付金、つまり国民負担で賄われる。

 レビューでは、機構がフランスの原子力企業「オラノ・サイクル」と、ふげんの使用済み核燃料を輸送する容器の設計などの「搬出準備」として、二〇一八年十月から三年半で約百三十三億円の契約を結んでいることがやり玉に挙がった。

 ふげんの使用済み核燃料はもともと、機構の東海再処理施設(東海村)に一二年度までに移送し終える計画だった。だが、再処理施設が東京電力福島第一原発事故を踏まえた追加安全対策を講じることになり、期限を一七年度に延長。その間に再処理施設の廃止が決まったため、新たな搬出先の見通しがないまま、二六年度までに福井県外に持ち出すことを県や敦賀市と約束した。

 文科省は「地元自治体から搬出期限の順守を非常に強く要請されている」と、オラノ社との契約の必要性を強調する。だが、ふげんの使用済み核燃料の取り扱いは、再処理するかどうかも含めて未定。再処理を前提とした「搬出準備」に着手したのは、地元向けの努力のポーズにも映る。

◆地元合意

 河野氏は、使用済み核燃料を仮にフランスで再処理した場合、抽出したプルトニウムを有償でフランスに引き取ってもらわざるを得ない可能性にも触れ、「(ふげんは)そこを決めなかったから、お金がいくらかかるかも分からない状況になっている。常陽を再稼働する前に、使用済み核燃料を最後までどうするかきちんと決めた上でなければ、また無駄な予算がかかるだろ!」と追及した。

 議論を取りまとめた永久寿夫PHP研究所専務は、文科省と機構に対し「再稼働させる前に、使用済み核燃料の処理方法と保管場所について明確な計画を見いだすこと。再稼働に関する地元合意を得る必要がある」と改善を求めた。

 機構は本紙の取材に「今後、文科省と協議する」とコメントした。

◆知事、再稼働「原発と違い」

 常陽の再稼働には、通常は原発のような立地自治体の同意プロセスはないが、新規制基準施行後に熱出力の変更などがあったことから、次回は県と大洗町の事前了解が必要となる。

 大井川和彦知事は十九日の記者会見で、県の判断について「最終的には(レビューを実施した)行政改革推進会議が報告書を取りまとめるので、それを踏まえて文科省や原子力機構がどう対応するかを見ながら検討したい」と述べた。

 判断の際に県民の声を聞くことには「(原発とは)規模その他を含め大きな違いがある」と否定的な考えを示し、「県原子力安全対策委員会で審議した上で是非を判断していく」と説明した。 (宮尾幹成)

使用済み核燃料の保管計画に注文が付いた高速実験炉「常陽」=大洗町で

使用済み核燃料の保管計画に注文が付いた高速実験炉「常陽」=大洗町で

<常陽> 消費した以上の核燃料が新たに得られる「夢の原子炉」とされた高速増殖炉のうち、原型炉「もんじゅ」の前段階の実験炉で、発電はしない。1977年に初臨界。2007年5月を最後に運転していないが、16年末のもんじゅの廃炉決定を受け、原型炉の次段階の実証炉開発に向けた実験や、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減の研究などを担うことになった。22年度以降とされている再稼働時期は延期される見通し。

<ふげん> ウランやプルトニウムの核分裂反応を起こしやすくする減速材に、通常の水(軽水)より効率の良い重水を用いる新型転換炉の原型炉で、1978年に運転開始。電気出力16.5万キロワット。核燃料に天然や低濃縮のウランも使えるため、ウラン濃縮を米国に頼らずに済むといった利点が強調されたが、重水が非常に高価で発電コストも高くなるなどの問題から撤退。2003年に運転を終えた。33年度に廃炉を完了する計画。

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November 21, 2020 at 05:49AM
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