選手会が動いたのは、保留者の続出が理由ではない
この2日前からスタートした中日の契約交渉は、正捕手の座をたぐり寄せた木下拓哉、先発に本格転向し8勝を挙げた福谷浩司、最優秀中継ぎのタイトルを獲得した福敬登の3人が立て続けにサインを保留した。この3人に限らず、活躍できたシーズンの契約交渉は胸躍るだろうし、期待も高まる。いざ提示された額に不満だとサインをしない権利も当然ある。 しかし、2日で3人が保留した程度で、選手会が「抗議文」とは穏やかではない。内容にもあるように、問われたのは保留者が続いた事実ではなく、交渉に臨む姿勢だった。何人かのチーム関係者に事情を聞いたところ、選手会が動いた背景はこうだ。 『ここ数年、選手と球団とのコミュニケーションが活発になり、誠実な協議が可能になるよう、当会は、契約更改における査定方法の十分な事前説明、年俸金額の事前通知を求めてきました』(同抗議文より引用) つまり、報道陣に知らされる「交渉日」はセレモニーに近く、実際の生々しい交渉はそれ以前に済ませましょうということだ。だからこそ近年は「一発更改」が当たり前だったのに、立て続けに3人とはどういうことだ? 選手会が中日選手会に聞き取りした結果、いくつかの問題点が明らかになった。
選手を「悪役」にしてはいけないという強い思いも
まずは下交渉の席で選手は球団から引き出せたと受けとっていた譲歩が、本交渉の席で反映されていなかったという点。選手は契約するつもりで来たのに「話が違う」となったわけだ。 おそらくは球団側が曖昧な返答をしたからだろうが「言った」「言わない」の話になった。そうなれば人間は感情の生き物だ。「態度」や「言葉遣い」にも逆なでされ、おまけに保留を伝える記事を読んでみたら「金額の話」で決裂したことになっている。半分はそうかもしれないが、それだけが原因だと言うのは乱暴だろう。少なくとも選手たちは譲歩を勝ち取ったと思って本交渉の席に着いたからだ。 選手会の異例ともいえる早期の対応は、選手を「悪役」にしてはいけないという強い思いもあるはずだ。 コロナ禍で開幕は大幅に遅れ、試合数も削減。無観客でスタートし、制限されたままフィニッシュした。総観客数はセ・リーグで実に81%減(前年比)。法的な側面はあるにせよ、MLBは原則的に日割りで支払った今シーズンの年俸を、NPBは全額支払った。 自営業、飲食業、観光業。世の中には悪戦苦闘しながら、例年よりはるかに少ない年収にあえいでいる人がたくさんいる。そんな中で選手会は「こいつらはよくもっと金を寄越せなんて言えるよな」という声に保留者をさらさせるわけにはいかないのだ。
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