林が決めた逆転の3ポイントシュート
残り15.2秒…さいたまスーパーアリーナに奇跡が起きた。得点は83ー85。運命の逆転の3ポイントシュートがゴールリングに吸い込まれていく。完璧な手応えが残っていたのだろう。林は、3ポイントシュートを放った両手をそのまま天井へ突き上げながらボールが描く美しい放物線の行き先を見届けていた。 「一瞬の出来事でしたけど、はっきりと覚えています。自分のリズムで落ち着いて打てました。プレッシャーも感じませんでしたし、日々の練習のおかげだと思っています」 残り37.4秒でフリースローを2本決められ、2点のリードを許した。追い詰められても不思議ではない状況で、日本は24秒の制限時間をめいっぱい使って攻め続けた。 そして、ポイントガード町田瑠唯(28・富士通)が林へボールを託す。3ポイントラインのやや後方でパスを受けた林は、ブロックしようと必死の形相で飛び込んでくるベルギー選手を含めて、自らを取り巻く状況をはっきりと把握していた。 シュートフェイクを入れてブロックをかわすと、すかさずシュートモーションに入る。より高い確率を求めて、ゴール下へドライブしてシュートする選択肢はなかった。 「自然の流れで最後のシュートになりました。それまで3ポイントシュートが落ちていましたけど、また外したら、という怖さもありませんでした。コートの上に立っている以上は、与えられた仕事を果たすことが自分の使命だと思っていたので」 仕事とは予選ラウンドの計3試合で、参加16ヵ国中で最多となる12本を決めていた3ポイントシュートとなる。当然ながらベルギーに警戒され、それまで7分の2の成功数にとどまっていた伝家の宝刀を、残り時間を把握した上で完璧に決めてみせた。
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