予想外にすんなりと予約を入れられた地元自治体の大規模接種会場で、新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種を受けた。翌日は副反応で37度台後半の発熱などがあったものの、大したことはなかった。むしろこの副反応が、自宅でゆっくりと過ごす格好の口実となり、朝から晩まで東京五輪をテレビ観戦することができた。
気になるのは接種時に交付された「接種済証」の使途である。接種日時や場所、ワクチンの種類を証明するものだ。担当者が「大切に保管してください」というのでしまってあるが、何の役に立つのかさっぱり分からない。観光地などの飲食、宿泊施設には、これを提示して割引サービスを受けられるところもあるようだが、筆者の周りでは、そんな「お得情報」を耳にすることもない。
もったいない話だ。無論、ワクチンは万能ではない。それでも企業活動を杓子(しゃくし)定規に制限するよりは、ワクチン接種の有無を根拠の一つに経済の自由度を増やすのも現実的な選択肢ではないか。そのために接種済証を活用すべきだと考える人は少なくないはずだ。
「お前は接種を受けたから身勝手なことを言うのだ」とお叱りを受けるかもしれない。政府内には接種者優遇が接種の強要や差別につながるという懸念もある。しかし、ここは冷静に考えたい。
営業自粛で窮地に陥った飲食店の中には要請を拒んで酒類提供に動くところも多い。そのせいで感染リスクが高まるという現実がある。この流れを断つには、接種済証の提示によって通常サービスを受けられるなど、柔軟な営業を認めるのが有効かもしれない。接種済証に利用価値があれば、幅広く接種を促す効果も期待できる。
詰まるところ、ワクチン接種と万全の感染対策を条件に経済や社会を段階的に動かすか、自粛要請を漫然と続けるかである。その判断材料にするためのリスク分析を政府は早急かつ具体的に行うべきだ。空念仏のように国民の協力を仰いでいても仕方がない。
国際通貨基金(IMF)によると、ワクチン確保が遅れる新興国・途上国と、接種が進む欧米の経済格差は来年にかけて広がる。ならば日本も迅速に動くべきだ。全世代にワクチンが行き渡るのをひたすら待つのではなく、できることから手をつける。感染急拡大期の今だからこそ、より合理的で納得できる政策判断が必要だ。
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