Saturday, April 13, 2024

熊本地震の膨大な公文書「何を残せば」…保管場所・選別基準なし「倉庫はすでにいっぱい」の町も - 読売新聞オンライン

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 2016年4月の熊本地震時の自治体の対応などを記した公文書について、熊本県内の全45市町村のうち、一般文書と区別して保存ルールを定めているのは、2割以下にとどまることが読売新聞の調査でわかった。初動や復旧復興の過程を検証し、教訓を後世に伝える貴重な資料になるが、地震発生から8年となり、廃棄したかを把握できていない自治体も多い。「どんな課題に直面したか」「どう乗り越えたか」――。熊本地震に関する公文書は、今後の災害に備える上でも貴重な資料となるが、保管場所の確保や選別作業など課題が多い。保存のあり方が定まらない自治体も多く、模索が続いている。

 「様々な業務の中で、文書管理は後回しになっており、保存や廃棄は各課で判断するしかない」

 益城町総務課の佐方幸一係長は、こう説明する。

 震度7を2度観測し、甚大な被害が生じた同町には熊本地震に特化した保存ルールはない。町の文書規定に基づいて1、3、5、10年などの期限を定めているが、保存は各担当課が担うため、総務課では関連公文書の全体量や、どこにどれだけあるのかを把握できていない。そのため、「各課の判断で、保存期限を過ぎて廃棄されている可能性もある」と明かす。

 多岐にわたり、膨大な量となる公文書の中で、何を残すのかという「選別」は多くの自治体で進んでいない。県内自治体の8割は地震に特化したルールを設けておらず、今回の調査で公文書保存の課題(複数回答)を尋ねたところ、「統一的な基準がない」を挙げたのが最多の28市町村に上った。

 甲佐町総務課の池田りか・庶務係長は「どういった文書を保存すべきか、自治体を超えた統一的な見解があるといい」と訴える。

 文書の多さも課題だ。保管場所の確保に苦労する自治体は多く、美里町は「文書を保存する倉庫はすでにいっぱい」。宇城市も「文書が多く、何の文書を残して、廃棄したのか把握できていない」とする。今回の調査でも「文書が膨大」(27市町村)、「保管場所が足りない」(24市町村)を課題に挙げる自治体が目立った。

 熊本市は、熊本地震関連の文書が、全体で段ボール約1400箱にも上るという。現在は旧東保健福祉センター(東区)などに収容しているが、2027年度末に公文書館を新設する方針。

 市は「当分は10年間の保存」とのルールを設けているが、満期を迎える際には、廃棄か永年保存かを決めるため、一つ一つ確認して選別する必要があり、市総務課の土井貴幸課長は「廃棄する文書の場合、なぜいらないのかを丁寧に見極める必要があり、労力を割くことになる」と話す。

 公文書管理法は、地方自治体にも国に準じて保存を求めているものの、熊本では地震から8年を迎えても保存のあり方が固まっていない自治体が多く、問題はたなざらしになっている。熊本県は、指定した公文書を永年保存する制度を設けているが、市町村の公文書に関しては「保存するか廃棄するかはあくまで市町村の判断」(県政情報文書課)とする。

 筑波大の白井哲哉教授(日本アーカイブズ学)は「未曽有の災害の経験を教訓として残すために、公文書は重要だ。ただ、『何を残せば良いのか』の判断が自治体のなかで不十分なため、十分な保存措置がとられているとは言い難い」と指摘。そのうえで「可能な限り保存し、活用に向けた議論を始めるべきだ。必要に応じて国や、被災経験がある別の自治体など外部に助言を求めてほしい」と話す。

 災害に関する記録は各地の被災地で保存されている。

 神戸市は、阪神大震災(1995年)の被災状況や復旧・復興に関する公文書などを「歴史的価値がある」として永年保存を決定。市によると、段ボール約6400箱分が選別の対象となり、作業は約8年間を要した。

 宮城県名取市図書館は、東日本大震災(2011年)の記録誌作成に使った資料をまとめて保存している。加藤 孔敬よしたか 館長は「1次資料があるので、時間がたっても正確な事実を洗い出すことができる」と説明する。

 宮城県は、県内市町村と連携して震災に関係する公文書や写真などを収集し、一部をインターネット上で公開している。県図書館の高橋誠治次長は「震災から13年がたち、記憶の風化が懸念される。記録を残すことで後世に当時の状況を伝えていきたい」と話す。

災害関連公文書の例 =災害対策本部会議の資料、「災害関連死」の審査資料、避難所からの報告書、 罹災りさい 証明書、災害弔慰金の支給決定通知書

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