(右から)加藤センター長、久野課長、高安さん
マニュアル、Q&A"必読励行"
JA水戸は管内を東部、西部、南部、北部と西部管内の渡里地区の5エリアに区分し、担当者を各1名配置する体制で計12の農業倉庫を管理している。
渡里地区にある那珂川低温倉庫は1997年竣工(しゅんこう)、収容能力1500tと管内の倉庫ではもっとも大きい基幹倉庫として機能を発揮、地区内で生産された米穀のほかに、西部管内(上中妻ライスセンター=RC)と北部管内(常北RC)からの米穀も荷受けしている。
那珂川低温倉庫の外観
物流問題への対応などで紙袋からフレコン出荷への転換が求められるなか、クレーン設備のある那珂川低温倉庫が他地区からのフレコン出荷を引き受けることによって、倉庫の役割分担と業務の効率化を図っている。
荷受けの準備開始は、例年、7月の中下旬。他地区のRCも含めて同倉庫への入庫計画を立てる。それに基づいて保管している前年産の米を移動し、入庫スペースを確保する。
管内で生産されている米の品種は「コシヒカリ」が7割を占め、そのほか「ふくまる」「あきたこまち」などが生産されている。
入庫計画ではそれら主食用米の品種・等級別の配置予定に加えて、買い取り米や飼料用米など制度別に区分けした米穀の配置も見込んで予定を立てる。
徹底清掃と設備点検
そのうえで徹底した清掃と設備の点検を行う。前室、庫内の床面はもちろん、庫内壁面に設置されている荷摺木とその裏、パレット、排水溝などを清掃、パレットは損傷の有無も点検する。
整理整頓された清掃用具
そのほか、フォークリフトやクレーンなど荷役作業機のメンテナンスも行う。
こうした準備作業を8月20日ごろまでに完了させるという。
荷受けは例年、9月初めにスタート。隣接するRCから運搬されてきた米を前室で農産物検査を実施し倉庫に入庫していく。荷受け作業の終了後には毎日必ず床面を清掃する。
荷受けのピークは9月下旬から10月上旬。この時期には他エリアのRCからのフレコンの入庫作業も加わる。
荷受けが完了するのは10月末。その後、注文に応じた出庫作業も行うことになるが、いうまでもなく重要になるのは入庫した米の保管管理であり、日々の倉庫内の状況確認と品質確認を繰り返し行っていく。
研修で「なぜ?」理解
同JAでは毎年4月に農業倉庫の担当者研修会を実施している。研修会では、JAが作成した「自主保管マニュアル」をはじめ、清掃に特化した「衛生管理マニュアルや一般衛生管理計画」とあわせ、農業倉庫基金の発行している『農業倉庫における米麦の保管管理 Q&A』や機関誌『農業倉庫・CE(カントリー・エレベーター)と防災』の内容等を確認している。
「これらの資料は単に書類として保管するのではなく、これを"読むこと"が担当者の引き継ぎ事項だと強調しています」と営農販売部販売課の久野清唯課長は話す。また年4回発行される「農業倉庫・CEと防災」から事故事例などのトピックを取り上げ、担当者で情報を共有、注意すべき点などを確認するという。
管理業務の基本となるのは「保管管理日誌」をつけることだが、これについて研修会では、日誌の「書き方」をしっかりと確認することにしている。その理由について久野課長は「なぜこの項目を記入しなければならないかが分かるから」と話す。つまり、日誌に記載されている各チェック項目の意味を理解することが重要だという。同時に日誌に記載されている「当月の重点管理事項」などをしっかり実践していくことでさらに業務の重要性が分かるという。
その後、新任の担当者には11月から12月にかけて実施される農業倉庫基金主催の全国研修会や全農茨城県本部開催の研修会にも参加させている。
また、年度始めには、担当者の資格状況も点検する。フォークリフト、クレーン、玉がけ、はい作業主任者などの資格を持っていない場合は資格取得を促す。同JAでは2023年度に全員にヘルメットを支給したが、ヘルメットにはそれぞれがどんな資格を持っているかが分かるように資格別のシールを貼り、無資格者が当該作業をしないよう管理している。
ヘルメットにはそれぞれが持つ資格のシールを貼っている
温湿度計の基準器を導入
那珂川低温倉庫では毎日、温湿度と穀温を計測、記録している。
温湿度計は通信機能を有したワイヤレスタイプを利用して庫内と庫外の温湿度を前室の親機温湿度計の画面上で確認できる機器も導入している。
温湿度・穀温の計測器。データを外部の機器に送る
庫内と庫外の温湿度を親機画面で確認できる
また、特筆されるのが温湿度計の基準器を導入していること。倉庫で使用している温湿度計の精度を確認し、基準からずれていれば補正を行い、正確な温湿度を把握できるように努めている。基準器自体も年に1度は点検する。
温湿度・穀温は可能な限り倉庫内の温度がもっとも高くなると考えられる午後1時過ぎに計測することを心がけている。
倉庫管理業務を管理する那珂川購買センターの加藤亮センター長は「温度、湿度をしっかり管理していないとかびの発生が心配。品質低下を防ぐため毎日の穀温と温湿度の計測は当たり前のように行っています」と話す。
高安洋樹さんは2月から担当者となった。購買センターから倉庫まで車で10分の距離で、毎日、清掃や倉庫状況を点検する。とくに大雨の後などは外壁の状態や雨漏りがないかなどをチェックする。これから夏にかけては雑草の除草作業も重要になる。
「食品を扱っている以上、しっかり衛生管理が行われていると思っていましたが、毎日、穀温と温湿度を計測していることを初めて知って、保管管理の重要性を理解しました」と話す。
毎月15日は水分検査と品質確認を行い、月に1回は本店立ち会いのもとで棚卸しが行われている。
高安さんのサポート役である加藤センター長は「保管管理の基本は日々、日誌をつけること」と強調する。
「日誌」は複数で点検
その日誌は、担当者が記入した後、統括センター長が内容を確認したうえ、本店に引き継がれる。本店では①販売課の出庫担当者②販売担当者③販売課長(=久野課長)がそれぞれ確認したうえ④営農販売部長が最終確認する。
「4人がチェックすることによって課題が見つかることもあります。たとえば湿度が高いのではないか、など。そうした疑問を現場に伝えます。多くの目で日誌をチェックすることで品質事故防止につなげていきたい」と久野課長。
一方、担当者にはマニュアルだけに頼らずに現場の状況に合わせた対応も求めている。
たとえば、倉庫内は気温15度以下、湿度は60~65%を維持することをめざしており、そのため11月でも庫内の温度が下がらないのであれば引き続き低温機械を運転させる必要がある。同じように5月以前にも、気温の上昇とともに低温機械のスイッチを入れる必要も出てくる。これも日々の穀温と温湿度の管理があるからこそ判断できることになる。
そのほか安全面では久野課長自らはい付け技術を現場で指導し、事故防止につなげている。
フォークリフトはフレコンの出庫ができるようツメに専用すべりどめを付けている
コンパネ(写真手前)を挟んでフレコンを安定化
「毎年同じことの繰り返しだが、大事なことは、農業倉庫は食品の保管場所である、という認識を皆でしっかり持つことに尽きると思っています」と久野課長は強調している。
からの記事と詳細 ( 【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:JA水戸 那珂川低温倉庫(茨城県) 温湿度・穀温 適正化徹底 - 農業協同組合新聞 )
https://ift.tt/GvTm9qN
0 Comments:
Post a Comment