
●クラウドストレージとは クラウドストレージは、クラウド上のストレージ、つまり「データの保存場所」を指す。オンライン上にデータを保管することにより、ファイルへの共有アクセスを可能とする仕組みだ。テレワークの普及により、社外からのファイル閲覧が必須となった時代において、どこからでもアクセス可能なクラウドストレージは、業務上欠かせないサービスの一つである。 ストレージの意味・オンラインストレージとの違い ストレージは、直訳すると「倉庫」、転じて「データを格納する場所」という意味である。PCやスマートフォンなどの内部ストレージ、外付けHDDなどの外部ストレージ。そして、クラウド上にデータを格納するのがクラウドストレージだ。クラウドストレージは物理的な装置を必要としないため、ユーザー側は場所や時間を問わずファイルへアクセスできる。 クラウドストレージの他に「オンラインストレージ」「ファイルストレージ」といった呼び方もあるが、内容的にはほぼ同義。クラウドストレージには、サーバやアプリケーションを通じてアクセスできるが、その際に認証が必要とされることでユーザーを限定する。個人向けから企業間での共用まで、提供されるストレージの容量は多種多様だ。 クラウドストレージの使い方 クラウドストレージの使い方は、使う側によって無限といってよいだろう。基本的にファイルデータであれば、いかなるものでも保存可能だ。 最も身近な例としては、モバイルアプリと結びついた写真保存サービスがある。スマートフォンなどで撮影された写真は、端末本体にも保存されるが、同時にクラウドストレージに保存される仕組みだ。 URLを送ることで、他人とシェアできる機能をもつストレージサービスも多い。また、端末の内容をバックアップする機能をもつサービスもある。スマートフォンの買い替えや故障に備えて、重要なデータを保存し、新しい端末に内容を丸ごと移行することも可能だ。ビジネス上最も便利なのが、複数人・複数デバイス間でのファイル共有。 同一書類を誰でもどこからでも閲覧できるため、簡単に情報共有ができる。近年、企業間での情報共有もクラウドストレージを活用することが多く、それに対応して大容量化が進んでいる。 クラウドストレージの特徴 クラウドストレージでは、複数人同時に同じファイルの閲覧・編集が可能だ。 メール添付でデータを送る場合、各人の手元に渡った時点で異なるファイルとなるため、編集しても他の人のファイルには反映されない。しかし、クラウドストレージの場合には、編集がそのまま反映されるため、利用者間での食い違いがおきにくい。 閲覧や編集については、アクセス権限を付与できるため、閲覧者を限定することも編集者を限定することも可能だ。また、遠隔地にいるプロジェクト参加者と効率的に作業が進められるだけでなく、バージョン履歴を残せる。そのため、いざというときはファイルの復元も可能だ。 物理的な場所に保管されるわけではないため、万一災害などが発生したときでも、重要データは守られる。データの一元管理を実現しながら、PCやスマートフォンなど多彩なデバイスに対応できることも、クラウドストレージの大きな魅力だろう。 ●クラウドストレージ導入のメリット4つ クラウドストレージを企業が導入すると、どのような点でメリットがあるのだろうか。主に次の4点があげられる。 ・・データの集約 ・・自動バックアップ ・・共同作業が容易になる ・・アクセスの場所を選ばない これらのメリットについて順番に、もう少し詳しく確認していこう。 データの集約 社内の各部署で異なるバージョンが存在すると、混乱を招きやすい。食い違いがあると、何度も確認を取ることになり、余分な作業が増えてしまう。しかし、クラウドストレージに集約されることで、部署ごとの相違がなくなりバージョン違いによるトラブル発生を回避できる。 「ファイルを重複して作成する」などのムダな作業が減り、業務の効率化が期待できるだろう。常に、最新のバージョンが提供できれば、「取引先に渡した後でデータが古かった」といったミスの心配もない。 データ管理は業務の基本だが、組織が大きいほど難しくなる。クラウドストレージの活用により、管理の手間が軽減可能となるだろう。 自動バックアップ データの消失は、企業にとって大きな損害に結びつくリスクがある。場合によっては、業務の継続が困難になる可能性も考えられるだろう。 クラウドストレージサービスでは、自動バックアップ機能が提供されている。そのため、データ消失の恐れを軽減することが可能だ。端末の故障、急な停電などが発生しても、自動バックアップ機能があれば、大きなダメージを回避できる。 バックアップ作業にかかる時間の節約となる他、データ消失に対するプレッシャーからも解放され、その分社員の負担も減らすことが期待できるだろう。 共同作業が容易になる クラウドストレージを使うことで、ファイルの共有や共同編集が格段に楽になる。Web会議システムなどを併用すれば、コミュニケーションを取りながら同じファイルにアクセスし、双方からの更新が可能だ。 瞬時に更新が反映されるため、意見交換や次の作業手順の確認もリアルタイムで行える。遠隔地にいる者同士が、あたかも同じ机上で作業をするようにオンライン上で協働できるのだ。クラウドストレージによって、距離感を意識しない作業進行が実現する。 アクセスの場所を選ばない イントラネットのサーバや、メールソフトを通じたやり取りとは異なり、インターネットを使える環境であれば、どのデバイスからでもファイルにアクセスできる。メモリスティックのような媒体を使わないため、携帯し忘れや置き忘れ、盗難といった心配もない。 出張先や営業先で必要書類が見当たらない……といったことはもう昔ばなし。ホテルに宿泊しながらでも、Wi-Fiにより簡単にアクセス可能だ。また、コンビニのマルチコピー機を使えば、手元にない書類が急に必要になったときも24時間いつでも印刷可能。 遠隔地にいても参加プロジェクトの進捗状況を確認できるため、出張先から戻ってすぐに合流しても、話題にズレが生じず時間的なロスもない。 ●クラウドストレージサービスを選ぶポイント クラウドストレージを利用するメリットはたくさんある。しかし、実際に導入を考えたとき、選択肢は膨大だ。数多くのサービス業者がクラウドストレージを提供しているため、それぞれが魅力的に見えてくる。クラウドストレージサービスを選ぶポイントは、主に以下の4点だ。 ・・費用 ・・容量 ・・セキュリティ ・・デバイスへの対応 費用 一度クラウドストレージを使い始めると、データはすぐに蓄積していく。途中で別のサービスに移行することは、非常に手間と時間がかかるため、あらかじめ長期運用を想定しなければならない。導入無料をうたうサービスも多いが、個人ならばともかく企業での利用となると無料分の容量ではすぐに不足する可能性が高い。 有料プランでは、月単位・年単位で料金が発生するため、「自社でどのくらいの容量が必要か」など、予算に見合うサービスを検討し、運用継続可能なラインを探っていく必要がある。同じクラウドストレージでも、自社で必要となるデータ容量やアクセスする社員数によって料金が変わるため注意が必要だ。 容量 先述したように、ビジネスで扱うデータは日々増大していく。そのため、「自社にとって十分なデータ容量が提供されているのか」確認が必要である。保存容量はもちろん、意外に見落としがちなのがアップロード・ダウンロード時の容量制限だ。 例えば、動画や大量の画像ファイルを頻繁に扱う業種であれば、「作業に支障が出ないか」を十分に考慮しなければならない。万が一、「分割しなければアップロードできない」といった状況に陥ると、業務効率の低下を招きかねないのだ。 セキュリティ 企業がクラウドストレージに預けるデータには、業務上の機密や個人情報といった重要な情報が含まれるケースも多い。クラウドストレージにおける主なセキュリティリスクは、次の2つだ。 ・・サーバーダウン ・・サイバー攻撃・不正アクセス 物理的障がいが発生し、サービスが停止する事態となれば、業務も滞りかねない。最悪の場合、データ消失も考えられる。また、外部からの侵入による情報漏えいが起これば、企業としての信用を損なうことになりかねない。 これらのセキュリティリスクに対して、二重三重の備えを施し、顧客のデータ保全を確保しているサービスであることが必須だ。 デバイスへの対応 総務省が公表している「令和元年通信利動向調査報告書(世帯編)」によると、2017年にスマートフォン(75.1%)の保有状況がパソコン(72.5%)を上回った。タブレットの機能も大きく進化し、パソコン以上に多用している人も増加傾向だ。 こうした社会背景もあり、クラウドストレージの有用性は、対応するデバイスの種類の豊富さで大きく変わってくる。スマートフォンやその他のモバイルデバイスでも、ビジネスユースに活用できる操作性が求められるだろう。 クラウドストレージは、デバイス間の連携をスムーズにする役割も担う。 ●クラウドストレージのシェア動向【企業規模別】 2020年にICT総研が行った「クラウドストレージサービス市場動向調査」によると、2019年3月末の日本国内のクラウドストレージサービス利用者は4,684万人だった。 しかし、2019年12月時点で4,962万人と約9ヵ月で278万人ほど増加。2022年度には、5,561万人にまで増加すると見込まれており、同年の市場規模は約857億円となる。 ここでは、2020年時点で利用者がどのようなクラウドストレージを利用しているのか、利用動向を解説していく。 個人向け ICT総研の同調査による個人利用者のクラウドストレージサービスにおけるシェアは、以下の通りだ。 第1位はGoogle Drive、次いでiCloud drive、3位Dropbox、Microsoft OneDriveが4位という結果だ。上位3位については「データ保管容量」「ユーザーインターフェース」「データの共有の容易さ」など、顧客満足度も高い。 さらに、運営会社に対する信頼性、セキュリティも重要な指標としてとらえられている。利用者の保存データ量は年々増加傾向にあり、大容量であることが欠かせない。一方で、「今後も無料サービスを利用したい」と考える利用者は6割超。「無料サービスでどれだけの容量を提供できるのか」が今後のカギになる。 中堅・中小向け 中堅・中小向けのクラウドストレージサービスでは、国内のみならず外資大手クラウド事業者の参入も増えている。なかでもシェアが高いのは、日本マイクロソフトのMicrosoft Office 365。ノークリサーチの調査(2019年)によると、2018年と比較して大きな伸びを見せ、2019年時点では利用全体の約3割を占める。次いで富士ゼロックスのDocuWorks、Google Driveと続く。 個人向けでは3位のDropboxだが、企業向けのDropboxビジネスは6位とふるわず、2018年からのシェアが6.6%→4.6%となっている。Microsoftの強さは、オフィスソフトとの連動性や、使い慣れたインターフェイスからのものと理解できるだろう。その他のサービスについては、機能の追加や更新などによって今後もシェアの入れ替わりが予測される。 企業向けクラウドストレージでは、「業種/業態への個別対応」と「豊富なAPI」が選択の大きな条件だ。そのため、「クラウド事業者がどこまでニーズに対応できるのか」が優位性の決め手となる。
からの記事と詳細 ( クラウドストレージ比較5選、基本知識・シェア上位サービス・選び方のポイントを解説(ビジネス+IT) - Yahoo!ニュース )
https://ift.tt/2W6eulz
0 Comments:
Post a Comment