2017年から2018年にかけてピークを打ったかに思われた暗号資産(仮想通貨)ブームですが、2021年11月にはビットコインが1BTC当たり700万円を超える史上最高値を記録しました。
FTX事件などを経て、2022年12月現在では1BTC当たり200万円台前半で推移していますが、それでも2017年当時の最高値に近い水準であり、暗号資産に対する注目度は依然として高い状況といえるでしょう。
暗号資産(仮想通貨)を保有している方が亡くなった場合、相続人が暗号資産(仮想通貨)を引き継ぎます。今回は、ビットコインなどの暗号資産を相続する際の手続きや注意点などをまとめました。
1. 暗号資産(仮想通貨)はどこに保管されているのか?
暗号資産の相続手続きを進めるに当たっては、まず暗号資産の保管場所を把握する必要があります。
そうはいっても、暗号資産には形がないため、物理的にどこかで保管されているわけではありません。正確には、暗号資産の送金時に用いる「秘密鍵」の保管場所を知ることができれば、暗号資産の相続手続きを進められます。
大抵の場合、暗号資産の秘密鍵は、以下のいずれかの場所に保管されています。遺品などを確認して、どこに秘密鍵が保管されているのかを探索しましょう。
(1)暗号資産取引所
暗号資産の売買ができる取引所です。国内ではbitFlyer、Coincheck、DMM Bitcoin、GMOコイン、bitbankなどが著名ですが、海外取引所に秘密鍵が保管されていることもあります。
(2)ウェブウォレット
暗号資産の秘密鍵を保管するためのウェブサービスです。MyEtherWallet、Gatehubなどがあります。
※暗号資産取引所のウォレットも、厳密にはウェブウォレットの一種です。
(3)デスクトップウォレット・モバイルウォレット
PCやスマートフォンなどの端末上で操作するウォレットです。
(4)ハードウェアウォレット
暗号資産の秘密鍵を保管する専用の端末です。
(5)ペーパーウォレット
暗号資産の秘密鍵情報を変換したQRコードが印刷された紙です。
2. 秘密鍵の保管方法別|暗号資産(仮想通貨)の相続手続き
暗号資産の相続手続きは、秘密鍵の保管方法によって異なります。
2-1. 暗号資産取引所
暗号資産取引所のウォレットに秘密鍵が保管されている場合は、暗号資産取引所が定める相続手続きに従って、被相続人口座から相続人口座へ残高の移管を行います。各暗号資産取引所のウェブサイトから、相続手続きの申請を行いましょう。
参考:相続|bitFlyer
2-2. ウェブウォレット・デスクトップウォレット・モバイルウォレット・ハードウェアウォレット
ウェブウォレット・デスクトップウォレット・モバイルウォレット・ハードウェアウォレットに秘密鍵が保管されている場合、各サービス(アプリ、端末)の機能を利用して、相続人のウォレットに暗号資産を送金することができます。
相続人間で遺産分割協議を行い、暗号資産を相続する人を決めた後、合意内容に従って送金を行いましょう。
ただし、被相続人のウォレットのパスワードなどがわからないと、秘密鍵を取り出せないため、暗号資産を送金できません。暗号資産を保有している方は、相続の際に家族へウォレットのパスワードが伝わるように、何らかの対策を講じておくべきでしょう。
2-3. ペーパーウォレットに保管されている場合
ペーパーウォレットに印刷されているQRコードは、デスクトップウォレットまたはモバイルウォレットの機能を用いて秘密鍵に復元することができます。復元後の秘密鍵を用いれば、相続人のウォレットへ暗号資産を送金できますので、遺産分割の内容に従って送金を行いましょう。
3. 暗号資産(仮想通貨)の相続に関する注意点
暗号資産の相続手続きを行う際には、特に以下の2点にご注意ください。
・秘密鍵が見つからなくても、相続税が課される可能性あり
・遺産分割時には、価格変動対策を行うべき
3-1. 秘密鍵が見つからなくても、相続税が課される可能性あり
秘密鍵の所在がわからない、あるいはウォレットのパスワードがわからないために、暗号資産を相続人のウォレットへ送金できないケースはよくあります。
このような場合にも、相続人が暗号資産を取得したものとみなされ、相続税が課税される可能性があるので注意が必要です。
特に遺産総額が多額に及ぶ場合には、税務調査が行われる可能性が高く、その際に被相続人による暗号資産の送金履歴などを指摘され、追徴課税を受けるリスクがあります。相続人に迷惑を掛けないためにも、暗号資産を保有している方は、ウォレットのパスワードが相続人へ伝わるように対策しておきましょう。
3-2. 遺産分割時には、価格変動対策を行うべき
暗号資産は価格変動が激しいため、遺産分割について合意した時点から、実際に暗号資産を相続人のウォレットへ移管するまでの期間に、価格が大幅に変動する可能性があります。
価格変動に端を発するトラブルを防止するため、遺産分割協議書において、暗号資産の価格基準時を明記しておきましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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