データセンター・イノベーション・フォーラム プログラム委員会とインプレスは、社会的なインフラとなっているデータセンターの今後の方向性を展望するイベント「データセンター・イノベーション・フォーラム2022 オンライン」を、12月8日・9日に開催した。
データセンター・イノベーション・フォーラムは、データセンター/クラウド基盤サービス事業者に加えて、ゼネコン、サブコン、設計会社、不動産会社や自社でDCを保有するユーザー企業など、データセンター事業に関わる各事業者を参加対象としたイベントとして、毎年開催している。
通算で31回目となる今回の「データセンター・イノベーション・フォーラム 2022 オンライン」は、「データセンターの設計・建設・管理運用の責任者、キーパーソンに『最適化』データセンター構築の処方箋を与える」と題し、Web3社会に向けたデータセンターの責任と貢献、データセンターの地方分散、再生可能エネルギーを前提とする脱炭素化に向けて求められる取り組みや、データセンター事業者のサービス展開に役立つサービス・ソリューション、最新の冷却技術、ストレージ、運用効率化に向けたソリューションなど、多数のセッションが行われた。ここでは、2日目の特別協賛講演として行われた、日本シーゲイト株式会社(Seagate)のセッションを紹介する。
デジタルデータの増大ペースが加速している。中でも、エンタープライズ、特にクラウドにおける増加が著しい。データエコノミー時代と言われ、データがビジネスの中心になる中、データストレージの電力やスペースはデータセンターにとって大きな課題だ。その解決策となり得るストレージ基盤について、日本シーゲイトの竹永光宏氏(営業本部 第三営業部 部長代理)が紹介した。
デジタルデータ増大でストレージコストが課題に
企業やデータセンターにおいて、ITの課題はおおむね以下の3つ。これはストレージの分野でも共通だ。
- コストの最適化(TCO削減、同じコストで大容量化)
- 省スペース/省電力
- 柔軟性/拡張性
また、半導体不足の問題がなかなか解決しない現在は、納期トラブルが課題というケースも多い。その他、実績のあるベンダーを使いたい、24時間対応の保守が欲しいなどが、よく挙がるニーズだろう。
2018年のIDCの調査では、デジタルデータの年間生成量は3年ごとに倍増ペースで、2025年には175ZBに到達すると予測されている。加速のペースはさらに進んで、2022年の調査では、2025年時点のデータ量は221ZBと修正されている。一方で、生成されるデジタルデータのうち「有効に保存されるのはわずか10%」と指摘されている。その理由は、ストレージコストやネットワークインフラの課題だ。
デジタルデータを生成するのはエンタープライズとコンシューマーのうち、どちらの割合が多いのかということが話題になることがある。一時期コンシューマーの割合が増えたこともあるが、現時点ではエンタープライズの伸びが大きい。IDCではこの傾向が強まると見ており、2026年には70%がエンタープライズからのデータになると予測している。特に、クラウドで生成されるデジタルデータの伸び率がかなり大きい。
また、企業の情報システムがメインフレーム(IT1.0)からクライアント-サーバー(IT2.0)、モバイル&クラウド(IT3.0)へと進展し、集中から分散、再び集中と変化してきたが、今新たなIT4.0の時代ではもう一度分散へという流れになっている。
Seagateは、HDDの技術革新により、40年以上にわたって大容量ストレージメディアをリードしてきた。しかし、このような環境の変化を経て、Seagateのストレージポートフォリオも進化している。現在は、デバイスだけでなく、システムやパブリッククラウドサービスに事業のポートフォリオを広げている。
Seagateストレージシステムは、自社設計の垂直統合システムで、最新のドライブ、最適な電力効率、かつ競争力のある価格が特長。豊富なOEM実績と充実した保守体制によってエンタープライズ用途で利用されている。垂直統合型とは、搭載する記憶デバイス、コントローラー、そしてエンクロージャーの3つの要素全てが自社設計で、標準化されたモジュールを組み上げて展開するもので、システムとして最適化されている。
消費電力とストレージ容量
竹永氏はまず、ストレージデバイスの消費電力について解説した。Seagateは、数十TBという大容量のドライブに強みを持っている。大容量ドライブであれば、容量当たりの消費電力は低く抑えられる。
例えば、20TBのHDDの場合、1W当たりのドライブ容量は約2TB。一般的な2TB程度のHDDやSSDと比較して、同じ電力消費で10倍近い容量となる。また、SSDの中でも通信速度の速いNVMeの場合は、さらにその差が広がる。
ストレージシステムとしての消費電力も、Seagate 20TBの場合は9.8Wで、2TBのHDDやSAS SSDと比較して、それほど大きな違いとはならない。高速なNVMeは、消費電力が大きく上回る。
また、経産省総合資源エネルギー調査会総会の磁気ディスク装置判断基準等ワーキンググループでは、磁気ディスク装置のエネルギー消費効率を数値化している。消費効率は、消費電力を記憶容量で割った値で、継続的にベンチマークすることが求められている。
磁気ディスクは、いくつかに分類されている。Seagate HDDは「区分V」のカテゴリで、2023年のターゲット値は0.0017となっているが、現時点でSeagate製品はこの数値を余裕でクリアする効率を実現している。
設置スペースと必要電力
大容量ストレージであれば、当然ながら設置スペースが抑制できる。データセンターではラック数がそのままコストなので、同じ容量であればコンパクトであるほどTCO削減になる。
例えば、7PB相当の容量が必要という場合、従来の一般的なストレージでは、4Uのエンクロージャーで8台というのが一般的な構成だ。単純計算で、32Uのスペースが必要ということになる。
もうひとつ考慮しなければならないのが消費電力で、8台で20kW以上の電力を必要とするので、ラック数としては3~4ラックに分散して収納することになる。
これを、Seagateの大容量ストレージで構成すると、4Uのエンクロージャー4台で実効7PBの容量を確保できる。消費電力も定格で8kWのため、うまくいけば1ラックに収まるだろう。
「非常に顕著な違いがでる。従来から使っているストレージを使い続けるのが安心という考えもあると思うが、今後の大容量化やクラウドへの対応の観点で、こうした要素を検討の指標に加えてほしい」(竹永氏)
導入事例
データ生成を加速するキーワードとして、IoTやメタバース、5G、AI、デジタルツインなどがある。さまざまなユースケースで大容量ストレージが優位性を発揮するが、竹永氏は具体的な導入事例をいくつか紹介した。
【事例①】米国大手携帯電話キャリア
背景:
4Gから5Gへの技術移行に伴い、システム構成に従来の10倍の容量が必要になった。他にも、
・監視対象となるアンテナや電波塔の増加
・インターネット対応デバイスのネットワーク拡大
・アプリケーションがネットワーク経由で送信するデータ量の増加
などが容量ニーズを押し上げている。
課題:
・最大500PB以上というスケールが求められるが、従来型のストレージは高価なため効率的な拡張ができない
・パブリッククラウドは拡張にコストがかかりすぎる
解決策:Seagate EXOS E 4U106+オープンソース「Ceph」
・16TBのドライブを活用し、4Uシャーシ1台で1.7PBの容量
・100PB以上に拡張可能なシステム
・オープンソースの分散ストレージソフトウェアCephプラットフォームを活用
・ブロック/ファイル/オブジェクトのマルチプロトコルに対応するインターフェイス
効果:
・パブリッククラウドにおいての必要なオプションと比較した場合、TCOが5倍削減
・初期テスト後、すぐに20PB以上に拡張
【事例②】国内エンターテイメント関連メーカー
背景:
高価なNASストレージを利用していたが、容量不足になってきた。一時的にテープメディアのLTOでアーカイブ運用を入れざるを得なかった。
課題:
・既存のNAS製品を単純にスケールアウトで増やすと、コストが増大する
・しかしLTOは使い勝手が悪い
・既存ストレージとの共存が必要
・プロジェクトスケジュールが非常にタイトで、短期導入が必要
解決策:Seagate EXOS X 5U84/E 5U84
・シンプルなペタバイトブロックストレージをベースにした構成
・1GB/s以上の速度性能
・ADAPTイレージャーコーディングで迅速な再構築
・Windows DFSをヘッドサーバーとしてiSCSIで接続し、既存ストレージと共存
・拡張用のE 5U84はSASで接続
効果:
・LTOからの脱却
・初期導入費30%削減
・タイトなスケジュールで納品
【事例③】国内建設・建築関係コンサル企業
背景:
オンプレミスで持っていた社内インフラ環境が非常に複雑化し、データ量も年に2倍のペースで増えている。大規模停電を経験し、事業継続性を考慮する必要がある。
課題:
・シンプルなインフラ環境にしたい
・ベンダーロックインを回避したい
・ITリソースを確実に確保したい
解決策:Seagate EXOS X 2U12/E 2U12
・大容量のブロックストレージをベースにしたシンプルな構成
・60万IOPS、800MB/sの高性能
・既存環境(NAS/VMware)とのストレージ統合
・オンプレミス2拠点でのDR構成
・ADAPTイレージャーコーディングで迅速な再構築
効果:
・従来と比べて200%のスループット向上
・遠隔地とのデータ同期で事業継続性を担保
【事例④】韓国の銀行のビデオ管理システム
背景:
170ch/450chのフルHDカメラからデータを取り込み、90日間保持する。このため、スループットと十分なストレージ容量が必要。
課題:
・ラックスペースの物理的制約
・VMS(ビデオ管理システム)との互換性
解決策:Seagate EXOS X 2U12/5U84, EXOS E 2U12/5U84
・シンプルなブロックストレージ
・費用対効果が高くニーズを満たすIOPS性能
・実証済みリファレンスアーキテクチャの多さ
・大規模ストレージ容量のサポート
効果:
・柔軟なスケールアップに対応
【事例⑤】大手クラウドサービスプロバイダー
背景:
クラウド基盤として高い信頼性が求められる。また、グローバル展開できる安定的なサプライや納期の対応が必要。
課題:
・スペース、重量などの物理的制約
・ストレージ容量の拡張性、最新ドライブへの対応
・TCOの低減、最適化
解決策:Seagate EXOS E 2U12/4U106
・4U/2Uを組み合わせて構成
以上のように、Seagate製品のさまざまな事例が増えている。竹永氏は、「弊社が強いのは、コストパフォーマンスに優れたストレージシステム。バックアップやクラウド基盤、VDIといったさまざまなユースケースで、グローバルで認知されているベンダーと連携して取り組んでいる。また、ストレージサーバーとソフトウェアとの連携で、従来NASで構築していた部分も提案可能な準備をしている」と締めくくった。
からの記事と詳細 ( データセンターのカーボンニュートラルに貢献する、Seagateによるストレージ基盤の新しい選択肢 - クラウド Watch )
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