倉庫保管サービスを利用して本格的なEC事業拡大を検討している企業であれば、一度は「倉庫保管の三期制(さんきせい)」という言葉を、耳にしたことがあるのではないでしょうか?「三期制」とは、期間の区切りで倉庫保管料金の計算をする方法の1つで、その他にも二期制や一期制という算出方法があります。
今回は、倉庫保管の三期制について、その概要や具体的な計算方法を分かりやすく解説していきます。倉庫保管料の基本的な内容について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
■目次
・倉庫保管の三期制とは?
・倉庫保管の料金体系
・三期制の計算方法
・三期制のメリット・デメリット
・失敗しない物流倉庫選びのポイント
・まとめ
倉庫保管の三期制とは?
倉庫保管の「三期制(さんきせい)」とは、自社が扱う商品の発送業務を外部に委託した場合に発生する、保管料の料金形態を指します。具体的には、1ヶ月を「1日〜10日」「11日〜20日」「21日〜月末」の3つの期間に区切り、それぞれの期で保管料を計算する仕組みです。
保管料には倉庫を利用する際のテナント料や在庫管理費用、入出庫料などが含まれ、倉庫の保管料の算出方法には、「個建て料金方式」と「坪貸し方式」の2種類があり、三期制とは「個建て料金方式」に用いられる算出方法です。
個建ての料金方式は以下の通りです。
1期の保管料=「保管積数」×「 保管料単価」
具体的な三期制の計算方法については、後ほど詳しく解説いたします。
一期制・二期制との違い
「三期制」以外にも、1ヶ月を「1日〜15日」「16日〜末日」の2つに区切る料金形態で、主に冷蔵倉庫で用いられている「二期制」や、1ヶ月を細分化せず、月ごとに保管料を算出す
「一期制」という算出方法も存在し、これらも個建て料金方式による算出方法のひとつです。多くの倉庫では、三期制または一期制の計算方法を使用することが一般的です。
倉庫保管の料金体系
では実際に、外部に発送業務を委託した場合、1ヶ月の保管料はどのくらいかかるのでしょうか?続いては倉庫保管料にかかる費用や、料金が発生する仕組みについてご紹介していきます。
物流コストが占める「保管料」の割合
物流業務で発生する費用全般を「物流コスト」と言いますが、物流コストは大きく以下の要素に分けられます。
①輸送料
②保管料
③作業料
保管料は預ける在庫量によって変動するため、委託する倉庫保管サービスによって価格差が発生しやすいのが特徴です。日本ロジスティクスシステム協会の「2020年度 物流コスト調査報告書【概要版】」によると保管料の割合は15.7%という結果で、物流コストの約16%程度を占めるという結果が報告されています。
保管料は物流倉庫との契約内容によって大きく変動するため、最適化することでコスト削減が期待できる要素です。保管料をできるだけ抑えたいのであれば、保管料が物流コストのどの程度を占めているのか知っておくと良いでしょう。
引用:https://www1.logistics.or.jp/
倉庫保管料を算出する5つの方法
預ける商品の量や大きさ、期間によって保管料は変動します。続いては、保管料を算出する際に用いられる単位についてそれぞれ解説していきます。
個建て
個建てとは、預ける商品の1個あたりに単価が設定されるもので、実際に倉庫に預けた商品の数で保管料を計算します。大きさがほぼ同じ場合によく使用される単位です。
坪建て
坪建てとは、1坪あたりに単価が設定されており、使用する坪数で保管料を計算します。
商品のサイズが大きくても、あくまで坪数が基準となるのが特徴です。
パレット建て
パレットとは、フォークリフトなどを用いて、輸送や保管のために荷物を載せる台のことを言います。
パレット建ては、使用するパレット1台あたりに単位が設定されており、保管料を算出する仕組みです。
重量建て
重量建てとは、商品の大きさに関係なく重さで保管料を算出する方法です。液体や穀物など、サイズよりも重量が大きくなるケースによく用いられ、1トンや1キロといった単位で計算されます。
容積建て
容積建ては、一般的にコンテナを使用した際によく用いられる保管料の計算方法です。「縦✕横✕高さ」の容積で計算され、「m(メートル)」や「㎥=立米(りゅうべい)」の単位が多く使用されます。
倉庫保管料の相場
倉庫保管サービスの平均相場は以下を参考にしてみてください。
坪数やパレット数など単位は倉庫会社によって変わりますが、いずれも4,000円〜7,000円前後です。エリアによって土地代は変わり、大都市圏の沿岸部の相場は特に高くなっています。
続いて、商品別の相場を見ていきましょう。
預ける商品によって1個あたりの費用はやや変動しますが、平均的には300円〜700円前後です。食品や飲料は温度管理の手間が発生するため、その他の商品よりも割高に設定される場合があります。また、アクセサリーなどのファッション雑貨は、細かな作業が求められることから、1個あたりの相場が比較的高めに設定される場合が多いです。
三期制の計算方法
続いては、個建てにおける三期制の保管料の算出方法について解説していきます。
三期制の計算方式は以下の通りです。
1期の保管料=「保管積数(前期末の在庫数 + 今期の入庫数)」×「 保管料単価」
三期制では、日割り計算で保管料を算出することができないため、預けるタイミングに関わらず、1期分の保管料が全額発生します。無駄なコストをかけないために、保管のタイミングに注意することが必要です。
それでは、具体的な計算例を交えて見ていきましょう。
■保管内容
1期ごとの保管単価が100円の場合
・1期の繰越在庫数は10、出庫数は5
・2期の入庫数は15
・3期の入庫数は20、出庫数は30
■保管料の計算式
・1期:10×100 = 1,000円
・2期:20×100 = 2,000円
・3期:40×100 = 4,000円
保管料は、3期目の入庫前に出庫があった場合、倉庫に同時にあった在庫は最大20個となりますが、計算式では40として計算することがポイントです。
三期制のメリット・デメリット
二期制や一期制という保管料の計算方法もある中、多くの倉庫で「三期制」が導入されるのはどうしてなのでしょうか。続いては、三期制のメリット・デメリットについて解説していきます。
三期制のメリット
三期制のメリットは、変動する在庫量に応じて保管料を支払える点です。多くの場合、時期によって在庫の動きが異なるため、在庫が動いた分だけ料金が発生する「変動費」とすることができます。「坪建て」のように保管料が固定されていないため、在庫の入出庫が少ない期間は、保管料を抑えることが可能です。
三期制のデメリット
デメリットは、どのタイミングで入庫しても1期分として同じ請求額になる点です。例えば、1月9日に入庫を開始しても、1期分の料金を支払わなくてはなりませんし、コスト削減のため、入庫を2期にずらせば、出庫が遅れることになります。EC事業では、いかに早く商品をユーザーに届けるかが重要となるため、配送に時間がかかれば機会損失も考えられます。また、入出庫の頻度によって保管料が算出されるため、在庫が動く頻度が高ければ割高になってしまうケースもあります。
入出庫の頻度が高い場合は、入庫数や在庫数の影響を受けない「坪数×坪単価」の利用方法を検討してみることがおすすめです。
失敗しない物流倉庫選びのポイント
保管料をはじめ、無駄な物流コストをかけないためにも、物流会社の選定はとても重要です。続いては、自社に合った物流会社を選ぶ際のポイントについて解説します。
保管料だけで選ばない
ここまで、保管料について解説してきましたが、保管料の安さを基準に物流倉庫を選ぶのはリスクが高いと言えます。
なぜなら、EC事業として保管を委託する場合は、単に「保管」だけでなく入荷や入庫、棚入れのような業務が含まれているからです。
・検品
・セット組
・ピッキング
・流通加工
・梱包
・棚卸
上記のように、さまざまな業務が必要となるため、物流コストのトータルバランスを考えたうえで、委託先を検討することがポイントです。
スピーディに受発注が行えるか
先ほども述べたように、EC事業は素早い対応と正確性が業務に必要不可欠です。そのため、入庫から出庫までの作業スピードが速く、ミスが少ない物流会社として定評のある事業者を選びましょう。周囲の評判だけでなく実際に作業工程を見学し、預けたい商品と似た荷物を扱っているかを確認しておきましょう。
在庫量の変動に対応できるか
在庫の動きによって柔軟に対応できる物流倉庫を選定することがポイントです。
在庫の増減に対応できない物流倉庫であれば、今後自社で取り扱う商品を拡大する際に、
新たな保管倉庫を探さなくてはならない手間が増えます。また、反対に閑散期に固定費として保管料を支払っていた場合でも、準固定費として対応させることも可能ですので、在庫の変動に応じて柔軟に対応してくれる物流倉庫を選びましょう。
まとめ
今回は、倉庫保管料「三期制」について、概要や具体的な計算方法をご紹介しました。三期制は、1ヶ月を「1日〜10日」「11日〜20日」「21日〜末日」に分けて保管料金を計算するため、在庫の変動に応じたコスト管理を行うことができます。それぞれの保管料の算出方法を正しく理解して、自社に合った物流会社を選びましょう。
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