はじめに
公正取引委員会は7月5日、無償保管や不当返品などの下請法違反行為があったとして、トヨタ自動車の子会社、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントに対し再発防止を勧告しました。
金型等の無償保管や車体パーツの不当返品が行われる
今回勧告を受けた、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント(以下、「トヨタC&D」は、救急車や道路パトロールカー・道路巡回車など、特別な用途のある「特装車」を開発・生産しているほか、モータースポーツ事業、パーツなどの用品事業を展開している会社です。
公正取引委員会は、同社に対し2023年5月に調査要請を行い、同年7月から実地調査を開始していたということです。その結果、下請代金支払遅延等防止法第4条第1項第4号(返品の禁止)及び同条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)の規定に違反する行為が認められたとして、7月5日、下請法第7条第2項及び第3項の規定に基づき、同社に対し勧告を行いました。
トヨタC&Dは、遅くとも2022年7月以降、バンパーなどの製造で使う金型や検査用器具合わせて664個を、部品メーカーなどの下請け企業49社に無償で保管させていたといいます。費用の算定は完了していないものの、計数千万円分の経費を負担させていた疑いがあり、費用算定が済み次第、速やかに下請け企業へ支払うということです。
また、トヨタC&Dでは、2022年7月〜2024年3月までの期間、下請け企業がバンパーなどの車体パーツを納品する際、品質検査をせずに返品し、メーカー側に損失を負担させていたとされています。不当な返品を受けた下請け企業は65社に上り、トヨタC&Dは返品分の下請代金相当額等である合計約5,400万円をすでに支払ったということです。
3月には、30億円の不当減額で日産にも勧告
自動車業界では、日産自動車も3月7日に下請法違反で公正取引委員会から再発防止を勧告されています。
日産自動車は、エンジン部品など自動車部品を製造する下請け企業36社に対し、2021年1月~2023年4月までの期間、納入時に支払う代金約30億2300万円を不当に減額していたとされています。下請代金の額から「割戻金」を差し引く形で減額しており、減額の認定額としては過去最高となりました。
勧告を受け、日産自動車の社長は取引の適正化への取り組みの一環として、5月31日に新たな部署をつくり、対応を進めていくと記者会見で発表しました。
新しい部署は「パートナーシップ改革推進室」という名称で、ものづくりや取引に関する法令に詳しい人材約20人を配属し、取引先の一次サプライヤー約2000社に直接出向いて相談に乗るなどするといいます。また、日産自動車への要望があれば、適宜社内で対応できるようにしていくということです。
さらに、この推進室で取り上げる案件は上位組織のパートナーシップ委員会でも取り上げられる方針だということです。
このほかにも、社外に取引先専用のホットラインを設けるとしており、対応改善に努めていくとしています。
コメント
下請法違反の事例では、親事業者の現場担当者が下請法を知らず、ただただ自社に有利となるよう要求を繰り返していた結果、下請法違反に至ってしまったケースもみられます。また、逆に、下請事業者側が下請法違反となる不当な要求を強いられている認識がないまま、長年、要求を飲み続けているケースもあるといいます。
トヨタC&Dのケースでは、無償保管については、当初、自社所有の金型を製品製造用に下請業者に貸与していたものの、長期間発注を行わない期間もそのまま預けっぱなしとしていたことが違反に繋がったとされています。また、品質検査を行わないまま返品を行った理由として、「品質検査は取引先において行う」という誤った認識(契約内容の誤認)が背景にあったといいます。
一般的な法規制と比べても、現場レベルでの高いリテラシーとコンプライアンス意識が求められる下請法規制。まずは、自社の下請取引の実態を確認すると共に、現場への下請法の粘り強い周知が重要になります。
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