データセンターの消費電力量が増大する可能性と、それを受けて企業がストレージについて考慮すべき点を前編「SSDとHDDを単純比較してはいけない理由 電力に敏感な企業のストレージ」で紹介した。企業が一般的に使用しているSSDやHDD、テープは容量単価やスループット(データ転送速度)だけではなく消費電力にも違いがある。消費電力をより重要視する場合、各種のストレージをどのように比較すればよいのか。
まずSSDの容量増加の点から見ておこう。これが消費電力を踏まえたストレージの比較に影響する可能性があるためだ。容量の観点では、HDDは過去に比べて増加ペースが緩やかになっている。その一方で、近年はSSDの容量増加が顕著だ。例えば1つのメモリセルに複数bitを書き込む多値化をはじめとした技術開発が進んでいる。
SSD、HDD、テープ――消費電力も踏まえたストレージの選択肢
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ストレージ各種の技術開発が進展
ストレージベンダーのNetAppでチーフテクノロジーエバンジェリストを務めるマット・ワッツ氏が特に注目する動向として挙げるのは、1つのメモリセルに4bitを格納する「クアッドレベルセル」(QLC)のSSDが実用化し、活用が広がっている点だ。「QLCになることでSSDの電力効率は高まり、容量単価は下がる傾向にある」とワッツ氏は説明する。SSDの大容量化の動向は顕著で、QLCによる容量30TBのSSDも登場している。「SSDの大容量化は続き、60TB、120TB、さらにペタバイト規模へと増えていくことも予測可能だ」と同氏は言う。
SSDの大容量化が進むことで、HDDの用途は全面的にSSDに置き換わるのか。実はそうとは考えにくい。ワッツ氏は「HDDはSSDよりも容量単価が安いという特徴がある」と指摘する。SSDよりも消費電力が高く電力コストが余計にかかったとしても、総所有コスト(TCO)を抑制できることはHDDを選択する理由になる。例えば長期保管用のデータをできるだけコスト効率良く保管したい場合は、SSDよりもHDDの方が適すると言える。だがコストよりも消費電力量の抑制を重要視する企業にとっては、HDDの優先度は下がる可能性がある。
テープにも独特の利点がある。テープは記録媒体をリールに巻き付ける構造をしているため、記録媒体の特定の位置を指定してデータを読み書きする「ランダムアクセス」は不得意なストレージだが、連続的にデータを読み書きする「シーケンシャルアクセス」は得意としている。電力消費においては、テープカートリッジはデータを読み書きするとき以外は電力を消費しない特徴を持つ。そのためデータサイズが大きめで使用頻度の低いデータを長期保管する用途に適しており、ワッツ氏は「テープは将来にわたって使われ続ける見込みのストレージだ」と指摘する。
消費電力で各種ストレージを比較するとHDDの分は悪くなるが、HDDベンダーも消費電力抑制を考慮に入れている。SSDやHDDを製造・販売するWestern Digitalで、HDD分野のシニアバイスプレジデントを務めるラヴィ・ペンディカンティ氏によれば、HDDの電力消費抑制につながる幾つかのポイントがある。その一つがHDD内部を空気ではなく、ヘリウムで満たす技術だ。HDD内部を空気ではなくヘリウムで満たすことは、可動部品に掛かる気流の抵抗を減少させる効果があり、結果として消費電力を抑制できる。別のポイントとしては、プラッタ(円盤状の記録媒体)の記録密度向上も電力消費抑制につながる可能性がある。HDD1台当たりの保存容量を増やすことで、HDDの使用台数を抑制できる可能性があるためだ。
未来のストレージにも期待
将来的には大容量データを低消費電力量で保管しやすい新たなストレージの登場にも期待が掛かる。例えばホログラフィー(立体像を記録する技術)を使う「ホログラフィックデータストレージ」(HDS)や、DNAの構成要素(アデニン〈A〉、チミン〈T〉、グアニン〈G〉、シトシン〈C〉)を使ってデータを記録する「DNAストレージ」などが研究開発段階にある。ワッツ氏は電力消費を考慮した将来のデータ保管を考える上では、これらの新たなストレージも注目に値するものだと話す。
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