新型コロナウイルス対策で政府が昨年、全戸配布した「アベノマスク」など布製マスク8000万枚以上が引き取られず、東京近郊の倉庫で眠っている。昨年8月から流浪の旅を続け、この倉庫にたどり着いた。これまでの保管費用は6億円を超え、今後もさらにかさんでいく。会計検査院からも注意を受けた。税金の無駄はやめてもらいたい。もったいないようにも感じるけど、やはり捨てるしかないのでは。(荒井六貴)
◆高さ5メートルの巨大な段ボール壁 カビ防止で除湿器も
1日午後2時。倉庫がある東京近郊の駅に着いた。場所をぼかしているのは、それが取材の条件だったからだ。案内役の厚生労働省医療用物資等確保対策推進室の岡譲室長は「倉庫にはマスク以外の荷物がある。騒ぎにもなってしまう」と理由を説明する。
巨大な倉庫には、大型のトラックから荷物を積み降ろしできる大きな搬入口もある。エレベーターで4階に上がると、目の前に8000万枚を超えるマスクが詰まった段ボールの巨大な壁が広がった。
鉄製ラック(高さ約1.7メートル、横、奥行き約1.2メートル)で、3段に段ボールをびっしりと積み重ねている。つまり、段ボールの壁の高さは約5メートル。それが、広さ80メートル×60メートルほどのフロアを埋め尽くしている。
「迫力ありますね」。思わずつぶやくと、岡さんも「そう思いますよね」と応じた。大きな地震があっても倒れないのか不安が頭をよぎった。
段ボールを1つ1つ見ていくと、その大きさはそれぞれ異なる。側面には輸入元のベトナムや中国の文字、枚数、業者名なども記載されていた。
至る所に除湿器が置かれている。窓はなく、虫が入ってくることはなさそう。岡さんは「マスクの使用期限は示されてないが、カビなどが生えないようにしている」と話す。ただ、保管期間は1年を超えている。中のマスクはともかく、破れたり、つぶれたりと段ボール箱の傷みは目立った。
◆日本郵便→佐川急便→日本通運…会計検査院も苦言
これだけの倉庫と品質を維持する手間。倉庫を管理する日本通運に支払う金額はまだ確定していない。目安になるのは、入札の予定価格。4月からの1年間で他の医療品と合わせ約5億1000万円だった。
なぜ、倉庫を公開したのか。岡さんは「どういう形で保管しているか国民の関心があるという声があった。隠し立てすることではない」と語った。
ここにたどり着くまで、アベノマスクは別の倉庫を転々としてきた。
最初に保管したのは、マスクの配布を担当していた日本郵便だ。昨年8月以降、余った分を保管し、費用は今年3月末までの契約で約5億2000万円。岡さんは「急に保管をお願いすることになったため、コストが高くなった」と説明する。
その費用を抑えようと入札で業者を募り、昨年10月に佐川急便と契約。少しずつ日本郵便の倉庫から移し替え、今年3月までに約8000万円かかった。この間、両社に計6億円を支払ったことになる。
それから今の倉庫に来た。マスクの保管を続ける限り、税金の投入は続く。会計検査院は11月、保管費用の節減を求めたほか、売却や譲与などで対応するよう求める報告書を出した。
会計検査院の指摘にどう対応していくのか。岡さんは「マスクが必要な施設があれば随時、配布している。厚労省のホームページには国民からの意見で、使途のアイデアも来ている。これから、どうしていくかは検討していく」と述べた。
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