Saturday, July 1, 2023

スウェーデン発欧州ストレージ共通基盤構想Unigrid ... - IT Leaders

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スウェーデンのUnigrid財団が、ブロックチェーン技術をベースとした分散型のストレージ共通基盤構想を発表した。クラウドサービスがGAFAMなど米国企業の独占となって久しいが、Unigrid構想は、欧州企業の主導で米国勢に対抗しようという試みだ。1万以上の欧州のデータセンターを巻き込んだ大規模な基盤になることをうたうが、どれほどのポテンシャルがあるのだろうか。

米国企業の独占に挑む欧州クラウド構想

 欧州では、現在、事実上、GAFAMのような米国のメガクラウド/ビッグテック企業が独占しているクラウドサービスに対抗して独自のクラウド共通基盤を持とうとする動きがある。こうした動きは、本連載でも過去にも何回か取り上げた。

 第8回で紹介した「GAIA-X」(欧州クラウド/データ基盤構想)は、米国企業に独占されているクラウドサービスを欧州主体の企業で実現しようという目論見であったが、第32回に続報したように、「GAIA-X」はその後、残念ながら迷走しているようだ。第34回で報じたように、EUがデジタル市場法を成立させ、EU市民の権利を保護するためと称して、米国のビッグテックに対してかなり厳しい規制をかけようとしているのも、米国への対抗意識の現れと考えることができる。

 さて、クラウドは単にデータを蓄積するインフラというだけでなく、データとオペレーションを統合したアプリケーションサービスやその稼働基盤(SaaS/PaaS/IaaS)が主流となっている。その代表がAmazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud、Microsoft Azureであるが、これらはすべて米国企業が生み出したシステムだ。

 この現状に対し、2023年5月8日、スウェーデンのUnigrid財団が欧州企業主体のストレージ共通基盤構想を発表した。ブロックチェーン技術を使ってデータのセキュリティを分散型で担保するという。GAIA-Xと同様、欧州による、欧州のためのクラウドを目指すもので、Unigridの主張は「中央集権型インターネットを分散型インターネットに置き換える」ことだが、欧州企業に向けて、米国企業のクラウドからの乗り換えを促そうとする意図が透けて見える。

 ドイツのメディアDigital Business Cloudの取材に対し、Unigridは「現時点で、Unigridにはすでに600以上のデータセンター(ノード)が参加しているが、ほどなく1万を超えるであろう」と述べている。

 現在、世界全体のクラウドのストレージ市場は急拡大している。Unigridによるクラウド構想の概要と、ドイツのメディアStorage Consortiumによると、2022年から2029年まで年平均で24%の成長を続け、2029年には3800億米ドル(約53兆円)規模にまで拡大するという。Unigridは、「データストレージを提供する企業に対しては、データ容量、転送速度、アクセススピードなどを勘案して対価を支払うが、ユーザーは現在の使用料金より、かなり低額で利用できるようになるはずだ」とアピールしている。

システム/性能/機能面での特徴

 図1はUnigridが提案するビジネスモデルである。ユーザーにはNFT(Non Fungible Token)のトークンが発行される。ユーザーのデータはネットワーク上の分散型データとして、パブリックデータあるいはプライベートデータとして格納される。NFTの性格上、プライベートデータ領域のアクセス権はデータ所有者に限定されるため、データ所有者以外の第三者による、故意もしくは過失によってデータが改竄/消去される心配はない。

図1:Unigridが提案するビジネスモデル(出典:Unigrid)
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 これが、Unigridの主張する最高レベルの情報セキュリティと耐障害性の意味するところだ。Digital Business Cloudの記事では、構想のセキュリティについて次のように述べている。

 「シャーディング(注1)、ストライピング(注2)、パリティブロック(注3)などの技術も取り入れることで、負荷分散とセキュリティを高めている。通常、ブロックチェーンでは新規のデータはそれ以前のブロックに追加され、データが不可避的に増加する。そのため、データアクセスやデータ転送は次第に遅くなる。それを回避するため、Unigridではデータを複数のブロックチェーンに分割し、パリティブロックを追加することで冗長性とフォールトトレラント性を向上させている」。

注1:シャーディングは、データを複数の独立した物理データベース間に水平分割すること。
注2:ストライピングは、データを複数のディスクに分割して書き込むこと。RAID0と呼ばれる。
注3:パリティブロックは、冗長性を確保する手法。アレイ内のドライブが故障したときに、故障していないドライブ群のデータブロックとパリティブロックから正しいデータを再構築できる。

●Next:AWSなど米国勢に対抗するためのアプローチは何?

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