コインベースの取引所とウォレットは別個のサービスなので、この問題に影響を受けるのは取引所のユーザーだけであり、ウォレットのユーザーは難を逃れるのかもしれない。また、同社のブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)最高経営責任者(CEO)は、ユーザーの資産はしっかりと保管されており、現時点で倒産のリスクは存在しないと釈明し、事態の沈静化を図っている。
それでも、この一件をきっかけに、筆者はデジタルコインを保管するベストな方法について考えるようになった。取引所、デジタルウォレット、物理ウォレットのどれがより安全なのだろうか。
そこで筆者は、59ドル(日本の公式サイトでの販売価格は税込9889円)のハードウェアウォレットを購入し、自分で試してみることにした。使ってみてわかったことを、以下にご報告しよう。
仮想通貨を移し替える操作は、ほぼストレスフリー
筆者は近所にあるベストバイの店舗に足を運び、レジャー・ナノS(Ledger Nano S)を購入した。暗号通貨を保存するハードウェアデバイスのメーカーの中で、レジャーが最も人気がある企業のひとつだったことがその理由だ。
売り場まで案内してくれた店員からは、ひょっとして仮想通貨でミリオネアになったのかと尋ねられた(そんなことはない)。
最初に気づいたのは、パッケージから、スリムな本体デザインまで、この製品が「アップル化」されていることだ。目を思い切り細めて見てみると、2017年に製造終了した、今は亡きiPod Shuffleに見えないこともない。
パッケージは、アップル製品を思わせるものだった。
Katie Canales/Insider
製品の説明書には、ナノSをノートパソコンに取り付け、レジャー・ライブ(Ledger Live)アプリをダウンロードするようにと書かれていた。指示に従うと、まず、筆者が使っているMacの「Finder」にデバイスが表示された。だが、USBメモリーのように、任意のファイルを気軽にドラッグするわけにはいかない。
セットアップの際にソフトウェアが必要になると知って、少し困惑した。物理ウォレットの最大の利点は、ハッキングのおそれがあるソフトウェアを使用しないことにあったのではないかと思ったのだ。
だが、アプリを立ち上げてみると、レジャー・ライブを使っている時も、レジャーは筆者の秘密鍵(さらには仮想通貨にアクセスする際のパスワード)をオンライン上で管理することはないと表示された。
レジャーが暗号鍵をオンライン管理しない点は、二択のクイズ方式のプロンプトでもさらに強調されていた。
Ledger
最初のステップは、レジャーの操作方法を覚えることだった。このデバイスには小さな画面が付いていて、側面のボタンを使ってスクロールし、クリックで決定する。
まず、PINコードを設定した。これは暗号鍵ではなく、ナノSにアクセスする目的で用いられるパスワードのようなものだ。
即座に設定したPINコードを書き留めて、安全な場所に保存する。PINコードを忘れた場合、当て推量で試行できるのは3回きりだ。それを超えると、永久に暗号資産へのアクセス権を失ってしまうので注意が必要だ。
デバイスの画面で、PINを作成するよう促された。
Katie Canales/Insider
次に待っているのは、24の英単語からなるリカバリーフレーズの設定だ。これをもとに、新しい固有の暗号鍵が生成される。
デバイスには、次の警告文が表示された。
「アカウントを回復する必要が生じた場合、これが唯一のバックアップになります。紛失や盗難、忘却が生じた場合は、あなたの資産はすべて失われ、決して取り戻すことはできません」
コインベース・ウォレットの削除は簡単ではない
さて、ここまで終えたら、筆者の保有する仮想通貨と接続するタイミングだ。既存のソフトウェアウォレットを、レジャーのハードウェアウォレット で管理できるオプションがあるので、まずはこの方法を試してみた。
筆者が行なった操作は、コインベース・ウォレット上に保存している保有資産を、使用中のマシンに入っているGoogle Chromeの拡張機能を通じてレジャーと接続すること。それだけだ。
これで、レジャー・ナノSがマシンに接続されていない限り、筆者の保有資産におかしなことが起きる余地はなくなった。また、アプリのレジャー・ライブを使って、リアルタイムで資産を確認することもできる。
保有資産を接続したあとのレジャー・ライブのアプリ画面。
Ledger
だが、筆者の目標のひとつは、自分とその保有資産を、コインベースのエコシステムから完璧に切り離せるかを確かめることだった。仮想通貨をコインベース・ウォレットに保管するのは、同社の取引所に保管するのとは別物だとわかってはいるが、できるかどうか試してみたかったのだ。
そこで、保有資産をレジャーに移し替え、コインベース・ウォレットの削除を試みた。だが、これは失敗に終わった。削除を可能にするには、口座の残高を0にする必要があり、わずかな資産を動かすにも手数料がかかるのだ。
そこで、この作業は購入したNFTをマーケットプレイスのオープンシー(OpenSea)から移動する手続きと同様に、後日行うことにした。
仮想通貨には、少額でも鉄壁の守りを
ナノSがアイドル状態のとき、そのディスプレイには「vires in numeris」と表示される。これは「数の上での優位」という意味のラテン語で、ビットコインのモットーでもある。
Katie Canales/Insider
これまでに試した他のすべての分散型テクノロジーと同様に、ここまでのプロセスは少し面倒だし、その割には劇的なメリットは実感できなかった。
だが、多額の資産を持つ仮想通貨ユーザーなら、感想はまったく違っただろうとも思う。自分のカネを盗もうと企てる悪者から資産を守る手段がさらに強化されたことで、今までより安心して眠れるようになるはずだ。
これは、ソフトウェアウォレットが、仮想通貨をジェミニ(Gemini)やコインベースなどの取引所に保管するのに比べて、セキュリティ面で見劣りするということではない(実際には、ソフトウェアウォレットのほうが安全だ)。そうではなく、いまだにセキュリティに関しておびただしい問題を抱える仮想通貨の世界では、ユーザーは、可能な限り安全が確保できる選択肢を求めているということだ。
仮想通貨企業INXのダグラス・ボスウィック最高事業責任者(CBO)に話を聞いたところ、こう教えてくれた。
「ハードウェアウォレットは、例えて言えばフォートノックス(アメリカの金銀塊保管所がある米軍施設)に資産を保管するようなものだ」
筆者が保有する仮想通貨はわずかなものとはいえ、フォートノックスと同じくらい堅固に守られていることを知れば、安心できるというものだ。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)
からの記事と詳細 ( 仮想通貨を安全に保管できるというハードウェアウォレットを使ってみた - Business Insider Japan )
https://ift.tt/5sC12BK
0 Comments:
Post a Comment