昭和後期に火葬に変わるまで、兵庫県丹波市(旧氷上郡)では一般的だった土葬。同市春日町の広瀬自治会(35戸)にある薬師堂に、土葬の際、亡き骸を墓地に運ぶために使われた「輿」(こし)が眠っている。今後、使う予定もなく、置いたままでも不都合がないため、保管されたまま。処分か保管継続か―。自治会は、きょう27日に開く総会で住民にはかる。
火葬に変わり昭和50年代まで使用か
処分を考えるようになったきっかけは、昨年末のお堂の新設。集落内に点在している石の仏像や石柱が十分にまつられなくなったことから、まつりやすくしようと、薬師堂の隣にお堂を建て、10柱以上を集めた。長く続いてきた集落の信仰を絶やさぬように現代化、合理化したのに合わせ、先人から引き継いだ輿を処分する話が持ち上がった。
山内一晃自治会長(68)は「こういうタイミングでないと話を持ち出すときがない。積極的に処分しようとも思っておらず、不都合もないので、みなさんの意向を聞いて、もう少し置いておけばということなら置いておく」と話している。寺院に処分する方法を相談していると言い、処分前に採寸したり写真を撮って記録を残すことを考えている。
輿は、往時の姿をとどめている。製作年代は不明。漆塗りで、卍や鳥居などの装飾のほか、鳳凰と見られる鳥、紋様が描かれている。台車に載っており、省力化をはかっていたことが伺える。
山内自治会長によると、昭和47年(1972)、自身の祖父が火葬されたのが、同自治会で最初の火葬という。その後、土葬と火葬が混在した時期があったことから、昭和50年代まで輿が使われていたとみられる。
輿と共に保管されている昭和49年(1974)を始まりとする帳面に「山人足」という、棺埋葬用の穴を掘った担当者の名前が記載されている。「平成7年」(1995)の記録があり、全面的に火葬に移行した後も、納骨用の穴を掘る役が一部残っていた様子も伺える。
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