Tuesday, July 7, 2020

いよいよ始まる「自筆証書遺言書保管制度」の補足説明 - JIJICO


【今日のポイント】

 民法改正の大きな目玉でもある法務局による自筆証書遺言書の保管制度もいよいよ今月10日から始まります。

 既に何度かこのコラムでも制度について紹介してきましたが、それまで紹介していなかった細かな規定や、その後に確定した内容などを改めて紹介したいと思います。

 また、タイミングよく発表された2020年の路線価と相続財産の主要項目である相続発生時の不動産の評価額に関係する注意事項をまとめておきました。

⇒以前に紹介した主なコラムの参照はコチラから
自筆証書遺言の案件の緩和関連記事1
自筆証書遺言の案件緩和関連記事2
自筆証書遺言の案件緩和の最新情報

【法務局での事前チェックはどの程度まで?】

 まず、既に法務省のホームページにこの制度に関するサイトが立ち上げられています。基本的な内容はこちらを参照して下さい。
 参考サイト ⇒ http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

 さて、ここから補足説明を始めますが、まずこの制度のメリットとして注目されているのが事前に「法務局のスタッフによる遺言書の有効性の確認」というのがあります。
 
 この文書だけ見ますと、いかにも微に入り細に入り遺言書の様式や内容の是非をチェックしアドバイスをしてくれるとも解釈出来ますが、そこまでの内容ではありません。

 直接法務局本局に確認したところ、「遺言者の氏名の記載の有無と、誤記のチェック」と「遺言書の日付の記載の有無と誤記入のチェック」及び「押印の有無と判別可能かどうかの確認」の範囲だそうです。

 署名がされているかどうか、まさかと思いますが誤字で書かれてはいないか、日付にしても記載漏れがないか、あるいは勘違いから未来の日付を書き込んではいないか? 判子は所定の箇所にもれなく押印されているか、にじみや薄さなどでは判別困難な押印ではないか? 法務局の事前のチェックとは、このような点の確認を行うというものです。

 遺言書本文にまで目を通し、例えば「〇〇にこの財産を与える」という表記に対し、誤解を招く表現なので「相続させる」と修正を促すような立ち入った確認や指導はしません。

 法務局のホームページには 遺言書の記載の見本が掲載されており、いろいろ注意事項が紹介されていますが、これは遺言書を作成する本人に対して、作成時に自己責任で確認すべき項目を紹介しているという意味です。ここにある内容を法務局がチェックするということではありません。

 あくまでも遺言書の内容については作成者の自己責任で作成し、確認をすべきものなのです。

【手続きに要する所要時間は?】

 まだ実施されていないサービスがどのくらいの時間がかかるのかを確定することは出来ませんが、現時点で予想される手続きに要する時間としては、概ね1時間前後はかかる見込みということでした。

 遺言書の保管手続きについては、事前予約制です。当日飛び込みで出向いても手続きは出来ないということです。予約制ですから、おおよその開始時間は確定できます(前の手続きが長引くような事態はないとは言えませんが)
 
 手続きとしては、申請者の身元の確認から必要な申請書類が揃っているか?その内容に不備がないかの確認から、ここに挙げた遺言書の様式チェックを済ませ、問題がなければ所定のスキャナーでスキャニングをしてデータを保管します。

 こうしてみると、これだけで1時間もかかるのか?と思えてきます。30分でも余裕なのではとも…
確かに手続きの内容だけを見ればそうですと言いたいのですが、開始当初はどうしても書類内容の不備や質疑応答は予定を避けられないとして、申請1件当たり余裕を含めて1時間前後と想定しているとのことでした。 スタート直後は双方が不慣れですから、申請手続きの直後に外せないような重要な用事等を入れたりはせず、当日はこの為だけに時間を空けておくといった備えも必要かもしれません。

【今後の問合せ先は?】

 あくまでも東京管内での紹介ですが、東京法務局本局には、遺言書保管に関するお問合せ先として、次の専用ダイヤルが設置されています。 

遺言書保管制度に関する専用ダイヤル:03-5213-1441  
受付時間は、平日の8:30~17:15 土日祝日は休みです。

 また、確認したところ、都内にある法務局の出張所ではこの件に関して担当者は設けていないとのことでした。よく最寄りの区役所内に併設された法務局の出張所を目にしますが、ここにこの件について尋ねたとしても専門の担当者はいないため、回答は出来かねるとのことでした。

 あくまでも、上記の連絡先への問合せか、遺言書保管を行う九段下の本局とごく少数の保管可能な指定の出張所でしか問い合わせ等の対応は出来ないという点は押さえておいて欲しい注意事項です。

 以前も紹介しましたが、東京に限れば遺言書の保管可能(相談対応も可能)な法務局は九段下の本局と23区内では板橋出張所のみ、区外では八王子、府中、西多摩の3支局の5か所だけとなっていますので、ご注意下さい。

 全国の保管対応可能な法務局の支局等については、冒頭にリンクした法務省のサイトから確認をお願いします。

 まずは時間を見計らって電話での相談から始めるのが妥当な進め方かと思います。

【追記:財産目録はコピーでのみ提出可能?】

 これは改めて紹介しますが、財産目録では通帳等は所定のページをコピーで代用が可能となりましたが、それならばコピーではなく、デジカメで撮影し、そのデータを紙にプリントアウトしたものでもコピーと解釈していいものかを尋ねたところ、これでも構わないとの回答でした。要は、明瞭に内容が判読できることと、法務局設置のスキャナーで正しくデーターが読み取れるものであれば、問題はないとのことでした。
 
 プリントアウトの際は、カラー印刷でも白黒印刷でも構わないとのことでした。
法務局のスキャナーではカラー画像はそのままカラーで保存されますが、証明書として写しを申請した際に交付されるデータは白黒印刷になるので、あえてカラーにする必要はなく、却って白黒では見えにくくなるような色合いもあるので最初から白黒で統一したほうが無難と思いますとのことでした。

【制度利用の前に】

  この7月1日には2020年分の土地の路線価(1月1日時点)が発表されました。相続税や贈与税の算定基準となる不動産評価額のベースです。この1年間で保有する不動産価格がどう変化したかの確認は欠かせませんし、仮に既に遺言書を作成した方にとっては、価額の変動幅が顕著な場合、財産分与の内容を見直す必要が出てくる可能性もあるのです。 

 その顕著な変動、それも下落という状況が顕著になってきています。特にこの4月以降はコロナ禍による不動産取引の急減を受けて場所によっては半年で評価額半減というような事態が生じているようです。

 ですが、冒頭に述べたように最新の路線価は今年の1月1日時点での評価額です。相続税法では相続財産である不動産は相続発生時の「時価」での評価と定められています。ですから額面上は1月1日時点で8千万円の評価額の不動産を相続したとしても、現時点で相続をした場合は現在の時価での相続となります。仮に相続直前に発生した風水害等による被害の結果、一気に時価が急落してしまったら?実際に冒頭に紹介したように風水害ではなくてもコロナ禍によってたった半年で時価が半減したケースがあります。8千万円のはずが4千万円台になってしまったら…

 ここまで極端な差が生じてしまったら法定相続分や遺留分にも少なくない影響を与えるでしょう。

 せっかく最新の路線価を反映させて完成させた自筆証書遺言書も、このような事態の前にはその苦労も報われないことになってしまいます。相続人間でも想定外の亀裂を生じさせてしまうかもしれません。

 今回の自筆証書遺言の保管制度の利用を考え、既に完成された自筆証書遺言書を所持している方で、特に不動産の比率が高いような場合はこの点について十分な配慮が求められます。 今回の路線価で計算した場合の不動産価格と、現時点での時価を改めて算出することで、既存の遺言書の内容に問題がないかどうかを事前に確認出来るのです。

 また、まだ予定の段階ですが、国交省が9月頃に公表する7月1日時点の基準地価でコロナ禍による大幅な地価の下落が認められた場合には「路線価の減額修正」が可能な措置を講じているとの情報もあります。差し迫った事情がないのであればこの動向を見極めてから、改めて遺言書の内容を見直して(法務局へ保管手続きを始めて)も遅くはないかと思うのですが…

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July 07, 2020 at 01:59PM
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