中小企業でファイルサーバーというと、部門単位でコンシューマ製品の小型NASを導入することも多いだろう。小型NASは、安価で手軽に導入できて便利だ。ただしそれだけに、中規模の企業でも、いつのまにか台数が増えてしまうことにもなりやすい。
「小型NASは、確かに"安くて簡単に導入でき便利"です。しかし台数が増えてくると全体管理が困難になり、セキュリティリスクも増大する可能性があります」と、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社の白川琢朗氏(製品・パートナー営業統括部 ストレージ営業部長 兼 事業開発マネージャー)は問題点を指摘する。
こうした小型NASの管理の問題点と、それに代わって中小企業でも使えるエンタープライズNASのメリットなどについて白川氏に聞いた。さらに、管理をより強化するソリューションについて株式会社網屋の別府征英氏(マーケティング部 部長)に、それらの導入について株式会社ネットワールドの内田康則氏(マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンタソリューション課)に聞いた。
前編の今回は、中小企業でも使えるエンタープライズNASと関連ソリューションの概要と、その利点である管理機能について紹介する。
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社の白川琢朗氏(製品・パートナー営業統括部 ストレージ営業部長 兼 事業開発マネージャー)
株式会社網屋の別府征英氏(マーケティング部 部長)
株式会社ネットワールドの内田康則氏(マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンタソリューション課)
企業内で無秩序に増える小型NASの危険性
コンシューマ製品の小型NASは、安価に購入でき、買って設置してすぐ使える。それだけに、データ量が増えたときに買い足したり、各部門で独自に導入したりと、無秩序に増えることにもつながる。
「その結果、会社全体での管理が困難になります」とレノボの白川氏は語る。
これによる問題の1つとして、容量効率が低下することがある「たとえば、営業部はいっぱいだが経理部はがら空きとかいうように、会社全体を見ると空きがいっぱいある、という状態になります」と白川氏。さらに、セキュリティリスクが増大することもあり、「潜在的なランニングコストが雪だるま式に増大します」と氏は言う。
故障や災害、ウイルス被害などに備えたバックアップも、管理の問題に含まれる。「小型NASを導入されている企業では、トラブルへの対策をちゃんと考えていないところも多いと聞いています。ファイルサーバーになにかがあったときに、データを復旧できなくなるケースも今後出てくると考えています」と白川氏は警告する。
NAS以外にも、最近では、個人向けのクラウドストレージサービスも中小企業でよく使われる。これらも、手軽に導入でき、機器の運用・管理が不要で、社外とデータを共有しやすいというメリットがある。
しかしデメリットもある。まず、手軽さゆえの情報漏洩などのセキュリティリスクの問題だ。
また、サービスコストの面もある。小規模では低額に始められるが「将来的にたとえば30TBが必要になったときに、5年間利用したらいくらになるか、果たしてどのくらいのユーザー様がサービス導入時に理解しているのか」と白川氏は疑問を投げかける。
そのほか、サービス停止の可能性など、サービス提供会社の運営に依存することもリスクとなる。
エンタープライズストレージOSのONTAPを搭載したエントリーモデル「Lenovo ThinkSystem DM3000H」
そこで、レノボが提案するのが、エンタープライズファイルサーバーのLenovo ThinkSystem DMシリーズだ。DMシリーズは、NVMe対応のオールフラッシュ製品から中小企業向けの製品までラインナップされている。
特に、中小企業向けにはエントリーモデルのDM3000Hを白川氏は勧める。
Lenovo ThinkSystem DM3000H
白川氏はDM3000Hについて、まず価格を競合製品と比較した強みとして挙げる。DM3000Hは、4TB×12本のディスクを備え、3年間の24時間 365日オンサイト保守が付いて、エンドユーザー向け価格238万円から。ちなみにネットワールドでは、保守期間を5年間に延長したキャンペーンモデルを298万円から提供している(6月24日受注分まで、数量限定)。
「他社製のエンタープライズグレードのストレージを導入したいと思っていたものの金額的に検討が難しく、結果小型NAS等を採用されていた企業にも、ご検討いただける価格だと思っています」(白川氏)
DMシリーズは、NetApp社が開発したストレージ専用OSであるONTAPを搭載しているのも大きな特徴だ。ONTAPはNAS市場で3~5割のシェアを持つOSで、レノボは2018年からグローバルでOEM提供を受けている。「信頼が厚い製品をレノボブランドで提供します」(白川氏)
SnapshotとSnapMirrorでデータ資産を守る
このONTAPの機能のうち、特に中小企業にも有用なものを見てみよう。
データ保護のためのONTAPの代表的な機能として、SnapshotとSnapMirrorがある。
Snapshotは、データのある時点の状態を保存する機能で、エンタープライズストレージにはよくある機能だ。ファイルコピーとは異なり、余分な容量を消費せずに瞬時に作成できる。
一般にSnapshotの方式はいろいろある。その中でONTAPのSnapshotは、ボリュームあたり最大1023世代、コントローラあたり最大1,023,000個のSnapshotバックアップイメージをとれる。さらに、世代をたくさんとっても、コントローラの性能にほぼ影響を与えないのが特徴だ。
「Snapshotを複数世代取得すればするほど性能が低下するため、あまりたくさんSnapshotをとれない、という製品もあります。それでたとえば2日に1度しかSnapshotをとれないとなると、障害が起きたときに、その間のデータをロスしてしまうことになってしまいます」と白川氏は語る。Snapshotが性能に影響するとRPO(Recovery Point Objective、目標復旧時点)に関わるというわけだ。
Snapshot機能はランサムウェア対策にもなる。Snapshotボリュームはリードオンリーで保存されるため、書き換えられることはなく、いつでも感染前の状態に戻せる。また、ONTAPは独自開発OSなので、Windows ServerベースやLinuxベースのファイルサーバーと比べると、ファイルサーバー自身がランサムウェアにかかりにくいと白川氏は強調した。
もう1つのSnapMirrorは、データのリプリケーションの機能だ。2台同じストレージを用意して非同期リプリケーションをする。
単にデータを保存するだけならSnapshotでもよいが、1つのストレージ内で保存するため、そのストレージが壊れてしまうようなケースには対応できない。SnapMirrorでは、異なる2台のストレージにレプリケーションすることで、そうした障害に対応できる。さらに、遠隔地やクラウド上のONTAPにリプリケーションすることで、災害対策もできる。
潜在的なリスクに伴うコストが下がることでトータルコストは高くない
こうしたONTAPの機能に加えて、DMシリーズには自動通報(AutoSupport)機能も標準で備わっている。故障などの障害発生時にストレージ筐体が自動的に障害通知する機能だ。通知先としては、ユーザー側のシステム管理者のほか、メーカーのサポートセンターに障害を通知することもでき、障害発生した場合は、通知を受け取ったLenovoの担当者から事前に登録されているユーザー側の管理者に障害復旧対応に関する連絡をプロアクティブに行うことができ、システム管理者は常時システムを管理することなく、迅速な障害復旧対応が可能となる。
そのほか重複排除の機能も備えており、たとえば複数の部署でまったく同じデータを持っている場合などにはディスク上の実体は1つにするなどしてディスクの使用量を削減できる。
白川氏は最後に「昨今の世界情勢の影響もあり、中小企業のデータ資産も消失やセキュリティの危険にあう可能性は十二分にあります。それに対して、DMシリーズによってしっかり保護できます。DMシリーズは、製品価格では小型NASに比べて安くはないように見えるかもしれませんが、障害発生やサイバー攻撃によるデータ損失などの潜在的なリスクに伴うコストが下がることで、結果的にトータルでは決して高くありません」と語った。
網屋のResource Athleteでファイルサーバーのデータや権限を棚卸し
ここまで、多数の小型NASからDMシリーズに移行することで、全体管理ができるようになり、データの利用効率を上げられることを見てきた。
こうしたファイルサーバーの全体管理とデータの効率化を強化するのが、網屋のサーバー管理ツール「Resource Athlete」だ。Resource Athleteは、フォルダアクセス権の変更管理や、不要ファイルや大容量ファイルの洗い出しなど、サーバーリソースに関するさまざまな情報を可視化し、レポート化する。
Resource Athleteは、ファイルサーバーとActive Directoryサーバーを対象としている。
ファイルサーバーについては、フォルダーのアクセス権限の棚卸しや、ファイルリソースの棚卸しに使われる。想定される利用シーンとしては、新しいファイルサーバーに移行するときを網屋の別府氏は挙げた。移行のときには、必要なファイルのみを移したいが、何が必要で何が必要でないかの判断が難しい。そこで、一定期間使われていないファイルや、一定容量を超えるフォルダーなどを棚卸ししてレポートすることで、何を削除して何を新サーバーに移行するかを判断する基準としてResource Athleteが使われるとのことだ。
Active Directoryについても同様に、一定期間使われていないアカウントや、グループに誰が含まれているかなどを棚卸ししてレポートする。
別府氏はONTAPに対してResource Athleteでファイルリソースを管理する利点も紹介した。ONTAPのクォータ管理では第2階層以下のフォルダーの容量を把握できないが、Resource Athleteならフォルダーの最大容量を指定するだけで、該当するフォルダーをすぐに発見できる。
ONTAPでのResource Athleteの利点
レポートの内容も、ウィザードに従うのみで設定できるため、リテラシーの高くない人でもすぐ運用までもっていけるという。レポートは指定したタイミングで作成され、指定のメールアドレスに通知することもできる。
そのほかの特徴として、Resource Athleteを含むALogシリーズ製品は一貫してエージェントレスで、対象サーバーやクライアントPCにエージェントをインストールする必要がないため、既存環境に影響が少ないことも別府氏は付け加えた。
動作環境としては、マネージャーサーバーはWindows Serverで動き、情報の取得対象の対象マシンはONTAPなどのNASストレージに対応する。
実際のResource Athleteの利用例としては、やはりファイルサーバーの交換のタイミングが多いと別府氏は語る。どのファイルが必要かなどをジャッジする必要があるため、Resource Athleteが使われているのだという。
10年来のONTAPストレージの経験を持つネットワールド
とはいえ、エンタープライズNASの導入は、小型NASのようにユーザーが買ってきて設置するだけ、とはいかない。そこで頼りになるのが、ネットワールドのようにONTAPストレージを長く取り扱っている実績のある企業だ。
「10年来のONTAP搭載のストレージビジネスの経験があり、2021年も弊社パートナー様を通じておよそ数百社のエンドユーザー様に製品をお届けしました。レノボのONTAP搭載ストレージであるDMシリーズにおいても、ネットワールドで手厚いご支援が可能となっておりますので、お困りのことがございましたら是非ご相談頂ければと存じます」とネットワールドの内田氏は自信を見せる。
また、網屋のALogシリーズも取り扱い対象だ。漫画をまじえて統合ログ管理ツールALog EVAを紹介する冊子も、ネットワールドオリジナルで作成して、WebでPDFを配布している。
なお、上述したように、ネットワールドでは現在、DMシリーズの年度末特急納品キャンペーンの第二弾を実施中だ。6月24日までの注文で、先着10台限定で、通常1か月で納品するところ、1週間程で出荷する。
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