Tuesday, March 15, 2022

8コア16スレッドのゲーミングミニPC「Beelink GTR5」。拡張性、発熱、動作音をチェック - PC Watch

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Beelink GTR5

 Beelinkは、8コア16スレッドのRyzen 9を搭載したゲーミングミニPC「Beelink GTR5」の販売を3月よりAmazonで開始した。価格は11万8,000円。海外の直販サイトでは949ドル(クーポン:GTR530利用で919ドル)から用意されている。

 本製品は約168×120×39mmとコミック2冊強のコンパクトサイズながら、オーバークロック可能な「AMD Ryzen 9 5900HX」を採用。dGPUは搭載されていないが、グラフィック品質を調節すれば3Dゲームもストレスなくプレイできる処理性能を備えている。

 とは言え小型化には当然トレードオフとなる要素があるはず。今回はパフォーマンスだけでなく、ミニPCの弱点となりがちな拡張性、発熱、動作音などもチェックしていこう。

Ryzen 9 5900HX、メモリ32GB、SSD 500GBとちょっとアンバランスな構成

 Amazonで販売されているのは1モデル。OSは「Windows 11 Home 64bit」、CPUは「AMD Ryzen 9 5900HX」(8コア16スレッド、3.3~4.6GHz)を採用。メモリは32GB(DDR4-3200 SO-DIMM)、ストレージは500GB(PCIe Gen3 x4 SSD)を搭載している。

 なお、本製品はIndiegogoでクラウドファンディングが実施されていたが、その際にはメモリとストレージを含まないベアボーンキット、メモリ16GB+SSD 500GB、32GB+500GB、64GB+1TBモデルが用意されていた。

 インターフェイスは、USB Type-C(データ、映像出力対応)×1、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0×2、DisplayPort×1、HDMI×1、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、3.5mmヘッドセット端子×1を用意。USB Type-C、DisplayPort、HDMIに同時出力することで、トリプルディスプレイ環境を構築できる。無線通信はWi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2対応だ。

 サイズは約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ)、重量は実測約679.5g。電源は外付けのACアダプタから供給する。

 Ryzen 9 5900HX、32GBメモリに500GBストレージという構成は個人的にはアンバランスな気がする。ただし、後述するがM.2のスロットが1基空いており、2.5インチのSATA接続SSD、HDDも増設可能だ。必要に応じてストレージを増設すればよいだろう。

【表1】Beelink GTR5のスペック
製品名 Beelink GTR5
OS Windows 11 Home 64bit バージョン21H2
CPU Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.30~4.60GHz)
GPU Radeon Graphics
メモリ DDR4-3200 SO-DIMM 16GB/32GB/64GB
ストレージ 500GB/1TB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280)
通信 Wi-Fi 6E(11ax)、Bluetooth 5.2
インターフェイス USB Type-C(データ、映像出力対応)×1、USB 3.0 Type-A×3、USB 2.0×2、DisplayPort×1、HDMI×1、有線LAN(2.5GBASE-T)×2、3.5mmヘッドセット端子×1
本体サイズ 約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ)
重量 実測約679.5g
セキュリティ 指紋認証センサー一体型電源ボタン
同梱品 ACアダプタ、電源ケーブル、ユーザーマニュアル、HDMIケーブル(100cm)、HDMIケーブル(20cm)、壁掛け式ブラケット×1、M4×6ネジ×3、M3×3ネジ×3、M3×5ネジ×5
カラー ブラック
価格 11万9,800円~
本体天面。BeelinkがAMDの公式パートナーであることを大きくアピールしている

Beelink GTR5のパフォーマンスは安定志向

 最後にパフォーマンスをチェックしよう。今回は総合ベンチマーク「PCMark 10 v2.1.2519」、3Dベンチマーク「3DMark v2.19.7225」、CPUベンチマーク「CINEBENCH R23.200」、「CINEBENCH R20.060」、「CINEBENCH R15.0」、3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」、ストレージベンチマーク「CrystalDiskMark 8.0.4」を実施した。

 比較対象としては、「AMD Ryzen 9 4900H」(8コア16スレッド、3.30~4.40GHz)を搭載する「MINISFORUM EliteMini HM90」のレビュー記事のスコアを転載している。

【表2】検証機の仕様
Beelink GTR5 MINISFORUM EliteMini HM90
CPU AMD Ryzen 9 5900HX(8コア16スレッド、3.30~4.60GHz) AMD Ryzen 9 4900H(8コア16スレッド、3.30~4.40GHz)
GPU AMD Radeon Graphics AMD Radeon Graphics
メモリ DDR4-3200 SDRAM 32GB DDR4-3200 SDRAM 32GB
ストレ-ジ 1TB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280) 512GB PCIe Gen3 x4 SSD(M.2 2280)
TDP 45+W 35-54W
OS Windows 11 Home 64bit バージョン21H2 Windows 10 Pro 64bit
サイズ 約168×120×39mm(幅×奥行き×高さ) 約149.6×149.6×55.5mm(幅×奥行き×高さ)
重量 実測約679.5g 820g
【表3】ベンチマ-ク結果
Beelink GTR5 MINISFORUM EliteMini HM90
PCMark 10 v2.1.2519
PCMark 10 Score 6470 4663
Essentials 10503 9494
App Start-up Score 14233 11932
Video Conferencing Score 8721 8461
Web Browsing Score 9336 8478
Productivity 9875 7898
Spreadsheets Score 12245 9568
Writing Score 7964 6521
Digital Content Creation 7089 6382
Photo Editing Score 10422 9573
Rendering and Visualization Score 6969 6440
Video Editing Score 4906 4218
3DMark v2.19.7225
Time Spy Extreme 771
Time Spy 1648 1280
Fire Strike Ultra 946
Fire Strike Extreme 1831
Fire Strike 4047 3242
Wild Life Extreme 2645
Wild Life 8819
Night Raid 17758 14172
CINEBENCH R23.200
CPU(Multi Core) 11985 pts 11351 pts
CPU(Single Core) 1489 pts 1291 pts
CINEBENCH R20.060
CPU 4620 pts
CPU(Single Core) 582 pts
CINEBENCH R15.0
OpenGL 82.82 fps
CPU 2001 cb
CPU(Single Core) 245 cb
FINAL FANTASY XV BENCHMARK
1,280×720ドット、標準品質、フルスクリ-ン 3587(普通)
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク
1,280×720ドット 標準品質(ノ-トPC) 10609(快適)
SSDをCrystalDiskMark 8.0.4で計測
1M Q8T1 シーケンシャルリード 2504.706 MB/s 2492 MB/s
1M Q8T1 シーケンシャルライト 1821.776 MB/s 1207.35 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルリード 2017.707 MB/s 820.32 MB/s
1M Q1T1 シーケンシャルライト 1813.523 MB/s 1178.93 MB/s
4K Q32T1 ランダムリ-ド 609.953 MB/s 552.39 MB/s
4K Q32T1 ランダムライト 448.837 MB/s 366.1 MB/s
4K Q1T1 ランダムリ-ド 54.039 MB/s 58 MB/s
4K Q1T1 ランダムライト 151.805 MB/s 201.69 MB/s

 まずCPU性能だが、Beelink GTR5は第3世代(Zen2)「Ryzen 9 4900H」より新しい第4世代(Zen3)「Ryzen 9 5900HX」を搭載しているのにもかかわらず、CINEBENCH R23のCPU(Multi Core)が約1.06倍相当の11985 ptsに留まっている。Beelink GTR5は発熱や動作音を抑えた安定志向にチューニングされている可能性がある。

 一方3D性能については、3DMarkのTime Spyで約1.29倍、Fire Strike、Night Raidで約1.25倍のスコアを記録している。また3Dゲームベンチマークでは、「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」で「3587(普通)」、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク」で「10609(快適)」を記録した(どちらも1,280×720ドット、標準品質)。解像度、グラフィック品質を調節すれば3Dゲームも実用的な速度でプレイ可能だ。

 なお、Beelink GTR5はBIOS設定で、パフォーマンスを調節する「AMD Overclocking」、「AMD CBS」などの項目が用意されている。自己責任とはなるが、デフォルトより処理性能を向上させることが可能だ。

AMD Overclockingの設定項目
AMD CBSの設定項目

 コンパクト筐体に8コア16スレッドCPUを搭載しているため、発熱、動作音が大きくなることを予想していたが、高負荷時の発熱は本体背面の排気口付近で最大52.3℃、動作音は最大44.4dBを記録した。

 手に持ったり、膝に乗せたりするPCではないので発熱は問題にならないが、動作音はやや気になる。ちなみに、室温25.6℃の部屋にて新しいページを「Edge」で開いただけでも、ファンが数秒動作した。音質は低めなのでそれほど耳障りではないが、動作音が気になる方はディスプレイの背面など、できるだけ自分より遠くに設置したほうがいい。

「FINAL FANTASY XV BENCHMARK」実行中の本体天面の最大温度は39.9℃(室温29.9℃で測定)
本体底面の最大温度は38.1℃
本体前面の最大温度は42.2℃
本体背面の最大温度は52.3℃
「CINEBENCH R23」実行中の動作音は最大44.4dBA(室温30.1℃、冷却ファン動作前の環境音が34.5dBAの室内で、端末から50cm離れた距離で測定)

処理性能、拡張性、設置性に優れ、価格も比較的抑えめなミニPC

 dGPUを搭載していないためゲーミングPCとしてはプレイできるタイトルが限られる。また解像度・品質設定も必要だ。しかし、8コア16スレッドのCPU性能は、クリエイティブ系アプリを快適に動作させるのに十二分なパフォーマンスを備えている。また、ミニPCとしてはメモリ、ストレージの増設も容易だった。処理性能、拡張性、そしてもちろん設置性に優れ、価格も比較的抑えめなBeelink GTR5は、ミニPC選びの際にぜひ候補に入れておきたい1台だ。

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