火災・騒音から住民生活守る
千葉県やさいたま市など地方自治体が「金属スクラップヤード」問題の対策を強化している。金属やプラスチックなど雑品を収集し保管するヤードで、火災や騒音などの問題が発生し、地域住民の生活に悪影響が出ている。鉄や非鉄のスクラップを扱う問屋や専門業者らで構成する団体も違法なヤード業者に対し声を上げており、対策に期待が集まる。(編集委員・丸山美和)
千葉県は2023年10月に「金属スクラップヤード規制条例」を全国の都道府県で初めて制定。4月に施行した。
中国が固体廃棄物の輸入禁止を講じたことで、千葉県内では17年ごろからヤードが増え始めた。広い土地に鋼板の囲いが設置されたヤードには、業者が回収した雑品が積み上げられていく。22年3月末時点で県内には332ヤードあり、そのうち数十カ所で火災や騒音、振動、汚水流出などの問題が発生。近隣住民らから苦情が相次いだ。このため「住民が安全に生活できるよう条例化を進めた」(千葉県の担当者)。
4月1日に施行した条例はヤードの設置を知事による許可制とし、罰則も設けた。許可申請の前には地域住民への事前説明会開催や現場責任者配置のほかに、崩落や火災防止のための囲いの設置、スクラップの高さ制限など基準順守を義務付けた。
無許可で営業したり県の命令に違反したりすれば、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となる。既存の事業者は施行から1年の経過措置期間中に許可を取得する必要がある。
比較的地価が安く、道路網が整備され、港もある千葉県は全国でも金属ヤードが多く、3月末時点で646カ所ある。千葉市や袖ケ浦市は県よりも早く許可制の条例を施行済みで、2月にはさいたま市、4月には茨城県も施行した。
首都圏近郊の自治体が条例の施行を進める一方、金属スクラップ問屋などで構成する団体も規制強化を求めている。
既存の事業者には中国を中心とした外国人による運営が多い。銅スクラップの問屋団体である東京非鉄金属商工協同組合の田子政夫理事長は「(条例や規制に違反した)不適正ヤードを運営する一部の海外事業者と、法令を順守している我々とが同一に見られて事業活動がしにくくなっている」と訴える。
実際、ヤードの高さ制限などを守るには追加の設備投資も必要で、自治体に許可を申請する際も審査手数料などがかかる。悪質な一部の業者は法令を守らないだけではない。市中よりも高値で雑品スクラップを買いあさり、必要な金属だけを取り出して、残ったスクラップの山を放置したまま行方をくらます事例もあるという。条例が施行されると未施行の地域に流れて行き、そこで新たにヤードを作っているのが現状だ。
このため「法令を順守している事業者を守るためにも、国内の有用な資源を国外に流出させないためにも、全国で規制を強化してもらいたい」(田子理事長)といい、現在、関連する複数の業界団体が今後の取り組みや方針を調整している。
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