企業の保有データが増えれば、ストレージの需要を押し上げることになる。AI(人工知能)技術で画像や文章を自動生成する「生成AI」(ジェネレーティブAI)の活用も、企業の保有データを増やす一因となる。
今後は保有データが増えることを受けて、クラウドストレージの利用をやめてオンプレミスストレージに回帰する企業が目立ってくる可能性がある。その背景にストレージのどのような課題があるのか。企業はストレージをどのように刷新すべきなのか。有識者の見解を基に探る。
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調査会社Futurum Groupのシニアアナリストであるデーブ・ラッフォ氏は、ストレージとしてハイブリッドクラウドストレージ(オンプレミスストレージとクラウドストレージの併用)を採用する企業が増えるほど、ストレージの運用においてコスト削減が焦点になると予測する。「クラウドサービスの利用をやめてオンプレミスインフラに回帰する『脱クラウド』の動きがある中で、企業は何が適切な判断になるのかを見極めようとしている」とラッフォ氏は言う。
「ハイブリッドクラウドストレージを求めてクラウドサービスを導入する企業は、『HPE GreenLake』や『Dell Technologies APEX』のような、オンプレミスインフラのサブスクリプションサービスを使うようになる」。アナリスト企業Small World Big Dataのプリンシパルアナリストであるマイク・マチェット氏はそう話す。こうした従量課金制でインフラを提供するサービスの台頭によって、企業はオンプレミスストレージを最大限に活用できるようになる。それによって、クラウドストレージへの出費が相対的に減り、クラウドベンダーに対する競争圧力になる可能性があるという。
「ストレージのハイブリッド化が進む中で、クラウドストレージが魅力的であり続けるためには、より安価であることが重要になる」というのがマチェット氏の考えだ。コンサルティング企業Silverton Consultingの創設者兼プレジデントであるレイ・ルチェシ氏も、「クラウドストレージベンダーは常に気を引き締めておく必要がある」と同意を示す。「以前はハードウェアの販売に注力していたストレージベンダーも、ハイブリッドクラウドストレージを提供するようになる」とルチェシ氏は推測する。
ルチェシ氏によると、NetAppはAmazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud Platformなど複数のクラウドベンダーと取引し、積極的にハイブリッドストレージに投資しているストレージベンダーの一社だ。同じくストレージベンダーのPure Storageは、従来提供してきたオールフラッシュストレージに、クラウドサービスを組み合わせたサービスを取り扱うようになった。
「ストレージベンダーは、クラウドサービスでもうけなければ自分たちの存在意義がなくなってしまうことに、随分前から気付いている」とルチェシ氏は述べる。
「使えればよいストレージ」「あればよいデータ」の見直しが必要
企業は、システムの基礎となるストレージのアーキテクチャや利用形態ではなく、そこで稼働させるアプリケーションや格納するデータをより重視するようになる可能性がある。マチェット氏は「ストレージ管理者でさえ、ハードウェアのことは気にしなくなる。データの保存方法やストレージの種類は重要ではなく、どのストレージを使っても構わない状態になる」と語る。
「オブジェクトストレージはコストを抑えつつ大量のデータを保存する場合には有用であり、それをオンプレミスで使うことは有力な選択肢となっている」とルチェシ氏は言う。拡張性やデータ形式の自由度に幅があるといった特性から、オブジェクトストレージは大量データ保存以外にもさまざまな用途がある。一方で、ミリ秒レベルの処理速度を要求するなど特定のパフォーマンス要件を要求するシステムやデータには、適切ではない場合があると同氏は指摘する。
オブジェクトストレージにあるアーカイブデータ(バックアップや長期保存が義務付けられたデータなど、頻繁に参照する必要がないデータ)の扱いについても再考が必要だ。マチェット氏は、企業にとってアーカイブデータの優先度が下がる可能性があるとみる。ストレージを新たに導入する企業は、データを保存しておく使用頻度の低いストレージよりも、アーカイブデータを含めデータを積極的に使うためのIT製品/サービスに投資するようになるということだ。「アーカイブデータを保存するためのストレージは不可欠だが、アーカイブデータを活用できていないのであれば、その維持費用が無駄になってしまう」とマチェット氏は述べる。
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