陸上女子100メートルと200メートルの日本記録保持者の福島千里(33=セイコー)が29日、東京都内で会見に臨み、現役引退を発表した。日本女子短距離界を背負ってきたヒロインが、ついに競技人生に幕を下ろした。今後は「セイコースマイルアンバサダー(スポーツ担当)」に就任し、スポーツを通した教育プログラムを行っていくという。
北海道出身。帯広南商高時代は日本一になれなかったが、07年に北海道ハイテクAC入りし、名伯楽・中村宏之監督の指導のもとで頭角を現した。08年4月の織田記念国際で当時の日本記録に並ぶ11秒36をマーク。その勢いは止まらず、北京五輪切符を獲得した。女子100メートルでの日本人の五輪出場は56年ぶりという快挙だった。
細身ながら強い足腰を武器にした爆発的なスタートダッシュが特長だった。五輪には12年ロンドン(100メートル、200メートル、4×100メートルリレー)、16年リオデジャネイロ(100メートル=欠場、200メートル)にも出場。世界選手権には4度出場し、11年の韓国・大邱大会では100メートルと200メートルの2種目で日本女子史上初の準決勝進出を果たした。100メートルの11秒21(10年)、200メートルの22秒88(16年)は今も日本記録として輝く。
16年リオデジャネイロ五輪後は両アキレス腱(けん)を痛め、日本選手権にも出られずに苦しんだ。再起を期し、東京五輪出場を目指した。21年6月の日本選手権で100メートルに臨んだが、予選4組で12秒01(追い風0・8メートル)の5着となり敗退した。そのレース後、「北京がきっかけで、世界をより身近に感じることができた」。スプリンターとしての姿同様、ひたすら前へと全力を貫いた競技人生だった。
◆福島千里(ふくしま・ちさと)1988年(昭63)6月27日、北海道・幕別町生まれ。帯広南商高卒業後、北海道ハイテクAC入り。17年のプロ転向を経て、18年1月にセイコー入社。昨春、順大大学院に進学し、スポーツ医科学などを学んでいる。
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