東京電力は27日、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理した後の水を保管するタンク(総容量約137万トン)の満杯時期を、これまでの「2023年春ごろ」から「23年秋ごろ」へと見直したことを公表した。日々の汚染水の発生量が減ったためで、最長で「24年1月ごろ」までタンクに保管できるという。
政府が昨年4月、浄化処理後も放射性物質トリチウムが主に残る水の海洋放出方針を決めた際、東電の従来の満杯時期の試算を根拠に「時間がない」と放出を急いでいた。地元漁業者らを中心に放出反対の声が強い中、現行の23年春ごろからの放出開始計画も見直しが可能となった。
だが、東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は記者会見で「政府方針に示されている通り、来年春に(放出が)始められるよう準備したい」と計画見直しを否定した。
東電によると、21年度の汚染水の発生量は1日130トンと推定。前年度より10トン減った。22年度以降の増加量を1日140~160トンと仮定した場合、タンク満杯は「23年7~10月ごろ」となった。また1日120トンの場合、満杯の時期は「24年1月ごろ」まで延びる。
21年度は降水量が前年度より多かったが、建屋屋上の穴をふさぐなど雨水流入を防ぐ対策が進み、汚染水発生の抑制につながった。(小川慎一)
福島第一原発の処理水 1~3号機の原子炉に注入した冷却水が事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れ、建屋に流入した地下水や雨水と混ざって発生する汚染水を、多核種除去設備(ALPS)で浄化処理した水。取り除けない放射性物質トリチウムが国の排出基準を上回る濃度で残る。政府は2021年4月、23年春をめどに処理水を海洋放出する方針を決定。東電は、大量の海水でトリチウム濃度を排出基準の40分の1未満に薄めて海へ流す計画を進めている。
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